【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る Vol.12~2002-03シーズン ~

2015年12月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

クラブの長い歴史において最も失望に彩られた暗黒のシーズン。

失望と屈辱まみれのシーズン。バルサの収穫といえば、主力選手の負傷などで得た出番をモノにし、急成長を遂げたモッタ(後列右から2人目)の存在ぐらいか。 (C) Getty Images

 ジョアン・ガスパール会長による新体制3年目を迎えたバルサ。過去2シーズン、リーガでは4位に沈み、何もタイトルを手にできずに終わっていた。
 
 前シーズンは、カルレス・レシャック監督の無策かつ場当たり的なサッカーがバルセロニスタを失望させ、選手は国王杯で下部リーグのチームに敗退する不甲斐なさを晒した他、スキャンダラスなプライベートが取り沙汰されるなど、大いにその株を落とした。
 
 選手にプロとしての自覚を促し、勝てるチームを作れる厳格な監督として、バルサが迎え入れたのは、ルイス・ファン・ハール。97-98シーズンからの3年間でリーガ連覇など、いくつものタイトルをもたらした一方で、面白味のないサッカーや極端な「オランダ化」によって、バルセロニスタと敵対した過去を持つ指揮官だ。
 
 彼の到来により、バルサを去ったのがリバウド。元々、クラブの体質を再三批判しながらも、高額な年俸を保証されていることで在籍し続けてきたリバウドだったが、サイドに張り続けることを強要する指揮官が戻って来るとあっては、もはや残留は不可能だった。
 
 そして、加入早々にファン・ハールによって失望を味わわされたのが、アルゼンチンの至宝であり、典型的な背番号10のファン・ロマン・リケルメだ。クラブ主導で獲得したこのクラッキ(天才)に対し、スター嫌いの指揮官は「不要な存在」と言い放ったのである。
 
 簡単に選手を放出する冷酷なやり方に異論を唱えてフロントスタッフが辞任するなど、開幕前から不穏な空気が漂っていたバルサ。そしてファン・ハールに率いられたチームは、昨シーズンの大失態を繰り返してしまった。
 
 リーガ開幕戦の後に臨んだ国王杯。バルサはノルベタという下部リーグのチームに3点を奪われ(2-3)、2年連続で1回戦敗退を喫する。ファン・ハールの不可解な選手起用、失点に繋がる致命的ミスの連発、試合後の責任のなすりつけ……悪い部分ばかりが噴出した。
 
 リーガでも、序盤は比較的順調な歩みを見せるも、間もなくして中盤で存在感を放っていたルイス・エンリケが負傷に倒れると、白星は遠のいていった。
 
 12節から14節まで3連敗を喫し、3連勝を挟んで再び連敗となったところで、早くもファン・ハール政権は終焉を迎える。そして、この出戻りオランダ人監督に会長生命を託したガスパールまでが辞任する事態となり、バルサは大激震に見舞われた。
 
 この後、アントニオ・デラクルスが暫定的に指揮を執り、21節からラドミール・アンティッチが正式な後任監督に就任すると、一時は15位まで沈んでいたチームも平穏を取り戻し、何とかUEFAカップ出場を得られる6位でシーズンを終えた(6位は87-88シーズン以来)。
 
 チャンピオンズ・リーグ(CL)では、昨シーズンに続いて2次リーグを突破したものの、準々決勝ではユベントス(この後決勝戦に進出)には力及ばず、このシーズンもやはり、何も得られずに終わった。
 
 バルサの歴史において、これほど混乱し、失望と惨めさに彩られたシーズンは他になかったのではないだろうか。
◎2002-03シーズン成績
リーガ:6位(15勝11分け12敗・63得点47失点)
国王杯:1回戦敗退(対ノベルダ)
チャンピオンズ・リーグ:準々決勝敗退(対ユベントス)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):クライファート(16点)、サビオラ(13点)、L・エンリケ(8点)、オーフェルマルス(6点)、メンディエタ(4点)、リケルメ(3点)、コクー(3点)、モッタ(3点)、シャビ(2点)、ロッケンバック(1点)、ソリン(1点)、ナバーロ(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

GK エンケ(←ベンフィカ)
GK V・バルデス(←ユースから昇格)
DF オレゲール(←ユースから昇格)
DF F・ナバーロ(←ユースから昇格)
MF リケルメ(←ボカ)
MF メンディエタ(←ラツィオ)
MF イニエスタ(←ユースから昇格)

DF ソリン(←クルゼイロ)
◇OUT

GKデュトルエル(→アラベス)
GK レイナ(→ビジャレアル)
DF アベラルド(→アラベス)
DF セルジ(→アトレティコ・マドリー)
DF ココ(→ミラン)
FW リバウド(→ミラン)

FW ジェオバンニ(→ベンフィカ)
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