【湘南】G大阪戦で抜群の安定感を発揮。GK富居大樹のプレーは、スイス代表守護神と重なる

2023年04月01日 岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

「メインはゴール前つなぐことではなく、点を取ること」

攻守に渡って好パフォーマンスを見せた富居。今季リーグ戦初出場で、チームのホーム初勝利に貢献した。(C)J.LEAGUE

[J1第6節]湘南4-1G大阪4月1日/レモンガススタジアム平塚

「プロとして当たり前の準備をしているだけです」

 湘南の今季ホーム初勝利に尽力したGK富居大樹は、謙虚に語った。

 湘南加入以降、リーグ戦の出場数だけを見れば、18~19年の秋元陽太、20~22年の谷晃生、23年~のソン・ボクグンに次ぐ数字。常に第二GKとしてチームを支えてきた富居だが、その貢献度は大きい。

 18年は、戴冠を果たしたルヴァンカップのグループステージで2試合に出場し、いずれもクリーンシートを達成しての勝利。19年は曺貴裁監督の退任後、リーグ戦で終盤の4試合と、J1参入プレーオフに出場して残留に貢献。20年~22年はルヴァンカップのほか、期限付きで加入していた谷が出場できないガンバ大阪戦でも出番を得て、活躍した。

 今季もルヴァンカップのGS1節・浦和レッズ戦、2節・川崎フロンターレ戦に先発し、いずれも無失点。ここでの好パフォーマンスを買われて、リーグ戦で初めてスタメンの座を掴んだのが、今節のG大阪戦だ。富居はここでも、期待通りの働きを見せる。

 7分にエリア内でのシュートを受けるも、足を残してセーブ。15分には最終ラインの背後を突かれたが、前に出てクリア。64分にも相手のミドルシュートに鋭い反応で対応した。

 特に目を引いたのがビルドアップだ。精度の高い左右への配球とロングボール、相手の隙を突く鋭いスローインで攻撃の起点に。11人目のフィールドプレーヤーのごとくパス回しに関わった。
 

 33歳になってなお成長中の足もとの技術について、富居は次のように語っている。

「足もとはもともと苦手ではなかったですが、(山口)智さんが監督になってからキーパーが逃げ道を作るプレーをより求められるようになりました。つなぎの部分は普段の練習からチーム全員が意識していて、ボールを受けるポジショニングも試合を重ねるごとに良くなってきている印象です。ただ、メインはゴール前でつなぐことではなく、点を取ること。その手助けをするために、準備しています」

 毎年、出番が多いとは言えないなかでも、ピンポイントで起用されれば安定したプレーを見せる。G大阪戦での勝点3は、まさに"仕事人"と言うべき富居の素晴らしい準備の賜物と言えるだろう。

 そんな富居が準備の段階で参考にしている選手がいる。バイエルン所属のヤン・ゾマーだ。本人が「背丈は大きくないけど、シュートストップや足もとの技術が上手いという点は見ていて勉強になります」と言うように、富居のプレーはスイス代表守護神と重なる部分もある。

 また、ゾマーから最も参考にしているプレーについて、こう語っている。

「重心のところですね。深く構えるのが彼の特長で、僕も意識しています。今日も足で止めたシーン(7分)がありましたが、あそこも重心が残っていたから足が出ました」

 参考にする選手のプレーから学び、成長を続ける。富居に言わせれば、これも「プロとして当たり前」なのかもしれないが、じっくりと次の出番を待ちながら常に準備し続けるのは簡単ではない。それをやり続けてきたからこその、G大阪戦での好プレーなのだろう。

「とにかく結果が欲しかったので、良かったです。無失点だったら一番良かったですが、勝って反省して、また次につなげられれば」

 勝利の後も、課題を口にした富居。4月9日に行なわれる次節のFC東京戦に向け、再び韓国代表ソン・ボムグンを含むGK3人との厳しい競争が始まる。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

【PHOTO】最後まで熱い応援を続けた湘南ベルマーレサポーター
 
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