W杯出場は通過点。大一番でも“普段通り”に闘った松木玖生のリーダーとしての責任と自覚【U-20代表】

2023年03月13日 松尾祐希

中2日の連戦、4試合に先発フル出場

ヨルダン戦でも攻守両面でタフにプレーした松木。写真:佐藤博之

[U-20アジア杯]日本2-0ヨルダン/3月12日/ロコモティフ・スタジアム

 勝てばU-20ワールドカップ出場が決まる大一番。U-20アジアカップの準々決勝・ヨルダン戦。プレッシャーを感じ、普段通りのプレーができなくなったとしても不思議ではない。しかし、選手たちは動じなかった。「びっくりしたのは、スタッフよりも選手のほうが緊張していなかったこと」(冨樫剛一監督)。指揮官が驚きを隠せないほど、23人のメンバーは冷静だった。

 朝からキックオフ直前まで降り続いた雨の影響でピッチはぬかるんでいた。「ラオスじゃん」。選手たちはスタジアムに着くと、難しいグラウンド状況をそう言った。9月中旬にラオスで開催された予選を戦った経験があったからこそ、出てきた言葉なのだろう。そうしたやり取りからも普段通りに戦える雰囲気が漂っていたなかで、キャプテンを務めるMF松木玖生(FC東京)の振る舞いは象徴的だった。

「普段通り」。さらりと言ってのけたように、献身的に戦う松木のプレーはいつもと変わらない。闘争心を剥き出しにして相手に襲いかかるスタイルで、序盤からピッチを所狭しと駆け回った。攻撃時は4-3-3のインサイドハーフで攻撃の起点となり、守備時は2トップの一角に入ってファーストDFとしてボールを追いかけていく。

 後半に入ってもパフォーマンスは落ちない。中2日の連戦も準々決勝で4試合目。全試合に先発フル出場を果たしている松木にとっては苦しかったに違いない。だが、運動量は落ちず、むしろ上がっているようにさえ見えた。

「勝っていても負けていても、最後まで笛がなるまで諦めない。そこは自分が見せないといけない」。リーダーとしての責任と自覚――。青森山田でもそうだったように、誰よりも仲間を鼓舞しながらプレーでチームを引っ張っていく。

 フリーランで味方にスペースを作り、フィジカルの強さを活かしたボールキープでチャンスを演出。プレー以外でもリーダーシップを発揮し、2-0で迎えた終盤には時間を上手く使いながら時計の針を進めるように促す場面もあった。
 
 また、選手が倒れた際には冷静に状況をジャッジ。メディカルスタッフがピッチに入ろうとしたタイミングで、軽症と判断した松木は大声で「入らなくていい」と叫んだ。メディカルスタッフが中に入ってしまうと、当該の選手は一度外に出なければならないからだ。それを踏まえての声掛けだった。

 そうした振る舞いも含め、松木は最後までリーダーとしてチームを牽引。アジアの舞台でもブレず、普段通りの姿勢を崩さずに最後まで戦った。

 気がつけば、青森山田と同じく、誰からも頼られる絶対的なリーダーとして日本代表を引っ張っている。試合後には「もちろん安心はしました、正直」という本音も思わず漏れたが、勝利の後に気を緩めない言動も昔から変わっていない。

「自分たちの目標はワールドカップに出場することと、もう一つがアジア1位で終わること。それが重要なので、次の試合に向けてもう、自分以外の選手も目を向けてやっている」とは松木の言葉。頼れるキャプテンにとってワールドカップ出場は通過点に過ぎない。貪欲に上を目ざす男の戦いはこれからも続く。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

【動画】坂本&熊田のゴールで2-0完勝! W杯出場権を掴んだヨルダン戦ハイライト
 

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