ストライカーに必要な能力とは何か。名古屋のユンカーが教えてくれた「直感」の重要性

2023年03月12日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「あの状況でシュートを打つのは、自分が今までやってきたこと」

柏戦に出場した名古屋のユンカー(77番)。1ゴール・1アシストをマークした。©J.LEAGUE

[J1リーグ4節]柏0-3名古屋/3月12日/三協フロンテア柏スタジアム

 ワンテンポでも遅れていたら、おそらくシュートは決まっていなかっただろう。

 敵地に乗り込んだ柏レイソル戦、0-0で迎えた41分に名古屋グランパスのキャスパー・ユンカーが見せた一連のプレーは実にスムーズだった。ペナルティエリア内右側でルーズボールを拾うと、トラップしてからすかさず左足を振り抜く。ボールは美しい孤を描き、ゴール左にコントロールショットを決めた。

「今日は相手の立田(悠悟)選手がマークしてきて、チャンスを掴むのが難しい試合だったと思います。それでも、あの瞬間にシュートを打てるチャンスが来たので、そこは迷わず打つ判断をしました。そこで判断できるのはストライカーとして必要だと思います」

 試合後にユンカーがゴールを振り返ったとおり、一瞬の判断がポイントだった得点だろう。少しでも足の振りが遅れたらシュートブロックされるか、相手GKに防がれた可能性が高い。では、なぜユンカーはすぐにシュートを打つ決断をできたのか。

「あの状況では正直、ゴールとかキーパーの状況は見ていないです。あれは自分の直感に従ったシュートです。そこに導くうえで、自分の経験値は大きい。あの状況でシュートを打つのは、自分が今までやってきたことなので、その直感に従ってシュートを打っただけです」
 
 ユンカーが教えてくれたのは「直感」の重要性だ。そこで必要になるのは本人が語る「経験値」であるのは間違いないが、以前の取材で脳科学者の篠原菊紀氏から聞いた「直感の"機能性"に差が生まれる要因」も、ここで紹介したい。

「最大の要因は感情です。パスが通ったなら『上手くいった』と喜び、通らなかったなら『失敗した』と悔やむ。そういう感情が良質な直感を育てます。だから喜怒哀楽を感じることはとても重要です」

 ゴールを決めれば喜び、チャンスを外せば悔やむ。喜怒哀楽を表現していた柏戦でのユンカーが印象的だった。心の底からスポーツを楽しむというサッカーの大事な根本に改めて気づかされた。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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