J1クラブが争奪戦をしたガンバ内定の関西学院大MF美藤倫。なぜ“憧れの先輩”がライバルとなるチームを選んだのか「複雑な気持ちはありますが…」

2023年03月05日 安藤隆人

左サイドバックで新境地を開く

デンソーカップチャレンジでは本職ではないSBでも起用された美藤。写真:安藤隆人

 デンソーカップチャレンジ茨城大会を制した関西選抜の中で、ボランチと左サイドバックで存在感を放ち、MVPを獲得した美藤倫。東海大仰星高から関西学院大に進み、J1クラブの争奪戦の末に来季からガンバ大阪に加わることが内定している注目の存在だ。

 関西学院大では不動のボランチとしてプレーしているが、今大会では前述した通り、左サイドバックで新境地を開いた。

「今大会で本職の左サイドバックが1人しかいないという状態だったので、自分が『やれ』と言われたらやりたいと思っていたし、実際にやらせてもらって非常にいい経験ができています」

 いきなり本職とは違うポジションを任された時、すぐにポジティブに受け入れてプレーに集中するのは簡単ではない。時にはプライドが邪魔をして、「なんで俺が」という感情が先に出てしまいかねない。ましてや関西選抜でも中軸であり、J1内定選手だ。当然、「なぜ」と思っても不思議ではない。だが、彼は違った。

「僕の中では試合に出ることが重要だと思っていますし、プロの世界ではいついかなる時でも突然来るチャンスをものにしないといけない。だからこそ、今回左サイドバックをやることは僕にとってポジティブなことなんです」

 実際に左サイドバックでは、周囲との連携が非常にスムーズだった。「僕はスピードがあって、縦突破してクロスを上げるようなタイプの選手ではないので、武器であるゲームを作る力をサイドバックの立ち位置で発揮しようと思った」と語ったように、中に絞ってビルドアップに参加をしたり、ボランチラインまで駆け上がって、対角のパスやためを作りながらテンポを変えるパスを出したりと、ボランチの時と同様にテンポを生み出した。
 
 その一方で、逆サイドが絞っているのを見ると、ワイドに張り出して、大外からポジションを前後にバランス良く取って、相手のサイドハーフとサイドバックを揺さぶりながら縦に仕掛けるなど、タッチラインをうまく活用したプレーを見せた。一連の左サイドバックとしてのプレーで、戦術理解力と適応能力の高さを十分に知ることができた。

「今後、ガンバ大阪でのポジション争いもそうだし、僕はパリオリンピック世代でもあるので、そこに食い込むためにも多くのポジションをやれた方が重宝されると思う」

 その視線の先には尊敬する先輩とのポジション争いも視野に入っている。ガンバ大阪のボランチには関西学院大の先輩である山本悠樹がいる。

「高校の時に一番に声をかけてもらったのが関西学院大でした。その時の4年生だった悠樹さんのようなボランチになりたいという憧れを持っていました。悠樹さんがライバルになるのは複雑な気持ちはありますが、一緒にプレーできることは光栄だし、楽しみでもあります」

 意気込みを語る真っ直ぐな目は、常に自分に向けられている。「昨年の天皇杯2回戦でガンバ大阪とやらせてもらった時に、パナスタのサポーターの熱さは日本一だと思った。ああいう舞台でプレーすることを夢見ていたので、ガンバに決めました」という初心を持ちながら、デンチャレMVPの看板に奢ることなく、明確な目標に向かって突き進む。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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