自己犠牲の精神で、仲間のために。札幌内定レフティ岡田大和の“凄み”。デンチャレでは「周りの良いところを引き出したい」

2023年03月02日 安藤隆人

左SBにコンバートされメキメキと頭角を現す

札幌内定の岡田。パワフルかつ献身的なプレーが魅力だ。写真:安藤隆人

 屈強なフィジカルと強烈な左足のキック。デンソーカップチャレンジ茨城大会でプレーオフ選抜の一員としてプレーする福岡大のDF岡田大和のプレーは、強度という面では他を圧倒している。

 彼の主戦場は左サイドバック、左ウイングバック。米子北高時代は高校2年生の春まではスピードとパワーを前面に出したストライカーであったが、途中で左足の精度とパワーを買われて左サイドバックにコンバート。そこからメキメキと頭角を現した。

 攻守の切り替えの速さや激しい球際、そしてルーズボールを拾う能力を駆使し、マイボールにした瞬間にその左足が唸りを上げる。対角にズバッと通すサイドチェンジや、動き出したFWに合わせるフィード。そして鋭い縦突破から見せる正確かつ強烈なクロスとミドルシュートが、相手の組織を破壊する。

 この稀有な能力は福岡大でも評価され、1年時から出番を掴んだ。そして、昨年11月には複数のJクラブの争奪戦の末に北海道コンサドーレ札幌入りを決めた。札幌の練習参加では3バックの左CBを任されると、後ろからのビルドアップや局面を変えるキックで順応をして見せた。

「札幌ではタッチ制限や、リターンなしの練習が結構あって、正確なダイレクトプレーが求められる。これまでどちらかというと大きな展開を武器にしていたので、少し戸惑いましたが、すぐに『今まで積み重ねてきたフィジカルと左足のインパクトにプラスをして、ダイレクトプレーや繋ぐ能力が加われば、もっと良い選手になれる』と考えました。練習の中で身体の向きや視野の確保、見るタイミングなどを意識してプレーできました」

 左サイドバックにコンバートした時、高校3年生のインターハイで主力センターバックの高橋祐翔の負傷離脱によってセンターバックをこなした時も、岡田はそのポジションをすぐに受け入れて、自分の武器を発揮する術を模索した。

 当時と同じように、新しいポジションやコンセプトを求められても、意欲的にプレーの幅を広げようとする。ペトロヴィッチ監督から「自分の持ち味を出せているから、もっと後ろでも前に運んで、個人で攻撃参加をして打開してほしい」とポジティブな注文を受けた。

 どのポジションでも武器は変わらない。その武器を発揮するためのアプローチを細かく変化させる。デンソーカップチャレンジのプレーオフでは九州選抜で3-5-2の左ウイングバックをこなし、本大会でも4-4-2を敷くプレーオフ選抜の左サイドバックで、急造チームながら抜群の連係を見せている。
 
「個人的には今年中にコンサドーレでデビューしたいし、大学ではチームを引っ張って行く立場として、去年は全国で勝てなかったので、全国で結果を残したい」

 そう野心を燃やす一方で、デンソーカップチャレンジ茨城大会には、ある想いを抱いてプレーをしている。

「デンチャレは進路が決まっていない選手にとっては重要な就職活動の場。自分は進路が決まっている身であるからこそ、まだ決まっていない選手がどんどん良いアピールができるように、僕が犠牲心を持ってプレーすることや、周りの良いところを引き出したいと思います。それが自分の成長にもつながると思うので」

 仲間思いの一面もある岡田は、チームのためにその左足と屈強なフィジカルをピッチ上で惜しげもなく披露する。結果的にそれが彼の示す『凄み』として、周りにインパクトを与えながら。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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