バルセロナのアンス・ファティの移籍の噂が沈静化しない。いくらシャビ監督が火消しに走り、本人がバルサでプレーする喜びを強調しても、開幕以来の低調なパフォーマンスや限られた出場機会という現実の前には力を失ってしまう。

　注目すべきは、バルサ寄りのメディアの中にも現状のままでは今夏の放出はやむなしとする識者が現われていることだ。例えば、『スポルト』紙のコラムでアルフレド・マルティネス記者はこう記している。

「彼はトンネルから脱出し、失った自信を取り戻そうともがき苦しんでいる。もう少し待ってほしいと思っていることだろう。クラブの経営状況を考えると、そのほうが得策だ。彼のような選手が仮に市場に売りに出されていたとしても、今のバルサには手は届かない。高嶺の花だ」

「しかし、もし夏を迎えても状況に変化がないなら、彼の将来をどうするか、改めて考え直さなければならないかもしれない。市場価格が高いうちに売りに出せば、経済的に多くのキャピタルゲインと利益を生み出すとともに、高額な年俸を節約できる。選手本人も環境を変えることがプラスと考えるのであればなおさらだ。両者にとって袂を分かつタイミングになる。これからシーズン終了までの3か月は、10番の進化の度合いをチェックするための重要な時間になる」
 

　2020年夏、クラブがリオネル・メッシの後継者に指名し、10番を託したのは、これから長くバンディエラとして活躍してほしいという期待の裏返しに他ならなかった。

　しかしいまでは、人気の面でも後発のガビとペドリに先を越され、『AS』紙はユニホームの売り上げ枚数でそのふたりがロベルト・レバンドフスキとともにトップ３を占める一方で、アンス・ファティは販売が低迷していることから、「クラブのマーケティング部が、10番を背負う選手の変更を希望している」と報じている。

　弱冠20歳ながら、アンス・ファティは最初の大きな正念場を迎えているのは間違いない。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部