相手GKの“壁”に阻まれるも、決して悲観的なスコアレスドローではなかった広島。課題を共有できた有意義な開幕戦に

2023年02月19日 寺田弘幸

スキッベ監督は「今日は少し運が足りなかった」

白星発進とはならなかったが、広島の選手からは前向きなコメントが聞かれた。(C)J.LEAGUE

[J1第1節]広島0-0札幌/2月18日/エディオンスタジアム広島

 立ち上がりから主導権を握っていた。チャンスも多く作り出した。ラストイヤーとなるエディオンスタジアム広島(Eスタ)で、広島は勢いよく攻撃を仕掛けていったが、ことごとく札幌のGK菅野孝憲の"壁"に阻まれて無得点に終わった。

 最大の決定機となったシーンは74分。野津田岳人が蹴ったCKをニアサイドで佐々木翔がヘディングで触り、ファーサイドに飛び込んだ川村拓夢がヘディングシュートを放ったが、菅野がゴールラインのギリギリのところでボールを足で触って弾き出した。

「自分の感覚では本当に入ったと思ったんですけど、菅野さんの反応が良かったです」

 川村が脱帽したビッグセーブに遭った他にも、前半に川村のシュートが大きく枠を逸れたシーンがあった。後半にもナッシム・ベン・カリファのシュートがゴールマウスを捉えられない場面もあった。ミヒャエル・スキッベ監督は試合後、得点を奪うために足りなかったところを問われ、こう応じている。

「まず一つは相手のGKを褒めるべきだと思っています。3本、4本のシュートを止められました。そして、ポストに当ててしまったり、ギリギリで外してしまったりもしました。我々のほうでどうしないといけなかったというよりも、今日は少し運が足りなかったと思います」

 試合終了間際に札幌が鋭く攻めて、菅大輝が放ったシュートがポストに弾かれた場面もあったため、札幌にも運が足りなかった。広島が手にした勝点1は失望だけでなく、安堵も混じり合うものになったことも含め、決して悲観的なスコアレスドローではなかった。
 
 そのことはミックスゾーンで試合を振り返った野津田の表情も物語っていた。ピッチ上の誰よりも多く走りながら攻撃を展開した背番号7は、開幕戦で課題を感じられたことを前向きに捉えていた。

「もっと攻撃のバリエーションを増やしたい。裏へのボールが多かったのは悪くないんですけど、裏を突く形、足もとでつないで相手の間を突いていく形、サイドから崩す形、ショートカウンターの形。そういったいろんな形で攻撃ができるようになれば、もっとチャンスは広がるなと感じられたことは良かったです。やっていることは間違いないし、相手がどんな対策をしてきたとしても、いろんな形でチャンスを作れるようにやっていきたい」

 広島の攻撃の強みは、相手の背後のスペースを突いていくところにある。開幕戦の前日に佐々木が重要視していたのも背後へのランニングで、「裏にボールがどんどん出ている時は前線の選手がイキイキとしているように見える。空いているスペースを突いてゴールに近い位置でプレーできれば得点機会も増えると思うので、自分たちでアクションを起こして意図的に相手のスペースを突いていきたい」と話していた通りの攻撃を展開して、広島は札幌を存分に苦しめた。それでもゴールを奪えなかったのは一辺倒になってしまったところもあったからだ。

 広島の強みは対戦相手も分かっている。それでも簡単に止められないほどの出力があるため主導権は握れるが、ゴールをこじ開けて勝点3を積み上げていくためにはバリエーションを増やして、緩急や中と外を使い分けていくことが必要になる。

 広島がもっと危険な攻撃をできるチームになるために、Eスタでのラストイヤーをもっと盛り上げるために、クリアしないといけない課題を共有できた有意義な開幕戦だった。

取材・文●寺田弘幸(フリーライター)

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