「僕の一番の夢」は叶わず、悔しさを噛みしめて…前橋育英の根津元輝が見定める新たな目標【選手権】

2023年01月05日 安藤隆人

「選手権では恩返しをしたかった」

終了間際に途中出場の根津。PK戦では5人目のキッカーを務め、想いを込めた一撃を突き刺した。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権準々決勝] 大津 0(5PK4)0 前橋育英/1月4日/駒場

 準々決勝の大津対前橋育英の一戦で、1人少なくなった前橋育英はギリギリの戦いを強いられていた。

 立ち上がりからリズムを掴んでいたが、後半18分に攻撃のキーマンであるMF小池直矢(3年)が2枚目のイエローカードで退場。1人少ない状態になり、大津の猛攻を受けたが、チームは身体を張って守りながら、カウンターでチャンスを作るなど気迫で戦っていた。

 その様子をMF根津元輝(3年)はベンチから見ていた。本来ならば、このピッチに立っていたはずだった。だが、3回戦・昌平との大一番でMF徳永涼(3年)と共に攻守の要として大活躍するも、この試合で今年の3月に大怪我を負った右膝を痛めてしまった。

「ボールを取り戻したところで再発してしまい、大津戦は最初から出たかったのですが、ダメでした」

 ベンチで仲間が必死で戦う姿を祈るようにして見ていた。そしてPK戦が濃厚となってきた後半40分に山田耕介監督から名前を呼ばれた。

「PK勝負になるから、最後の締めは頼む。気持ちを込めて蹴ってきてくれ」

 根津はPKを得意としており、山田監督は最後の最後で根津のキックにチームを託したのだった。

「監督が僕を信頼してくれた証なので、絶対に応えたいと思ったし、声をかけてくれたスタンドにいる選手、ベンチにいる選手にも応えたいと思った」と、覚悟を持ってピッチに飛び出していった。

 アディショナルタイム3分間を仲間と共に戦い、PK戦では5人目のキッカーとしてきっちりとゴールに突き刺した。だが、勝利の女神は微笑みかけなかった。インターハイ王者の選手権は準々決勝で幕を閉じた。
 
「本当に苦しい1年でした。何度も『自分は何やっているんだろう』と思いましたし、思うようにいかないことが多かった」

 根津は1年時から出番を掴み、昨年からキャプテンの徳永とダブルボランチを組んだ。だが前述したように、3月に右膝の後十字靭帯を負傷し、長期離脱を強いられた。

「副キャプテンだったのに、ピッチに立てなくてもどかしかったし、悔しかった」ともがきながらもリハビリを続け、インターハイ前に復帰。だが、万全の状態ではなく、優勝したインターハイでは試合途中で流れを変えたり、試合を締める役割としてチームを支えた。

「自分が全然プレーできていなかったのに、メンバーに入れてもらって、勝つごとにプレー時間を与えてもらった。だからこそ、選手権ではその恩返しをしたかった」

 覚悟と感謝の気持ちを持って臨んだ選手権。ベスト8まで勝ち進んだが、最後の最後もプレー時間は短いまま終わってしまった。

「悔しいです。でも、ずっと涼とチームが勝つために何をすべきかを話し合いながらやってくることができた。この悔しさと経験を絶対に今後に活かしたいし、活かさないといけない。僕の一番の夢は、選手権で優勝することだったので、それができなかったからこそ、大学でもう1回、日本一を獲りたい。新たな目標が決まったので、自分自身をまた一から見つめ直しながらやっていきたい」

 根津の高校サッカーは終わりを告げたが、彼のサッカー人生はまだまだ続く。苦しんだ分、力に変えて次なるステージでもっと成長すべく、彼はしっかりと前を向いた。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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