「イライラせずにやっていたら…」日体大柏FWオウイエがプロ入り前に学んだ不動心。涙ながらに言葉を紡ぐ【選手権】

2023年01月05日 安藤隆人

「相手にとってもっと怖い選手になりたい」

空中戦で圧倒的な強さを見せたオウイエ(左)。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権準々決勝] 日体大柏0(3PK4)東山/1月4日/浦和駒場スタジアム

 お互いなかなか点が入らない一進一退の攻防が続いたなかで、日体大柏のFWオウイエ・ウイリアム(3年)は焦りを覚えていた。

 初出場ながらベスト8に進んだ日体大柏のストロングポイントは、平野伶(3年)と古谷柊介(3年)の両サイドハーフ、オウイエと吉田眞翔(3年)の2トップの前線4枚の破壊力。その中で190cmの高さを誇り、柏レイソル内定のオウイエはポストプレーヤー兼フィニッシャーとして多くの役割を担っていた。

 だが、準々決勝の東山戦では、CB新谷陸斗(3年)を中心にした堅い守備に苦しめられた。フリーになろうとするが必ず1枚は食いついてくるし、ポストプレーをした後のセカンドアクションに対してスペースを埋められたり、身体をぶつけられてバランスを崩すなど、思うようなプレーができず、苛立ちが募っていった。

 それでも55分にはDFラインからのロングボールに対し、得意のスピードでコンタクトにきたCB志津正剛(2年)を振り切ってGKと1対1に。しかし左足でファーサイドにインカーブで突き刺すイメージを持ってシュートを放つが、痛恨のキックミス。ボールは大きくゴールの左外に流れていった。その瞬間、オウイエは飛びながら頭を抱えて全身で悔しさを表現した。

 思うようにプレーできない。ゴールが決められない。最後までエースからゴールは生まれることなく、勝負はスコアレスドローのままPK戦へ。先攻の日体大柏1人目が外し、後攻の東山3人目が外す。それ以外は全員が成功し、勝負は5人目のキッカーに委ねられた。
【選手権準々決勝PHOTO】東山0(4PK3)0日体大柏|PK先の末に日体大柏を下し東山が悲願の4強入り!!
 日体大柏5人目のキッカーはオウイエ。慎重にボールをセットし、左足でゴール左隅を狙ったが、これはGK佐藤瑞起(3年)にセーブされた。その後、東山5人目がきっちりと決めたことで勝負あり。オウイエの最初で最後の選手権はベスト8で幕を閉じた。

「1本のチャンスを仕留めていれば勝っていた。本当に悔しいです。(抜け出したシーンの)シュートは得意の角度だったので、入ると思ったのですが……。甘かったです」

 試合後、オウイエは目に涙を溜めながら悔しさを口に。「PKは簡単じゃないですし、自分をもっと持って、自分を信じて蹴らないとこうなると感じました」と、PKに関しても自分の甘さを痛感した。さらに試合を通してのメンタリティーついても言及した。

「最初から何か上手くいかないことが多くて少しイライラしてしまったんです。そこでイライラせずにやっていたら、もうちょっと結果は変わっていたのかなと思います。どんな状況でも落ち着いてプレーに集中することは簡単ではないですし、そういう意味ではまだまだ実力が足りない。もっと個のレベルを上げていきたいと思います」

 これから先、より厳しいプロの世界に身を投じることになる。そこで成長をするためには、ストライカーとしての牙を磨き続けられる不動心が必要となることをこの試合を通じて学べた。あとはこの学びを行動に移していくのみ。

「相手にとってもっと怖い選手になりたい」

 涙を見せながらも最後まで真摯に言葉を紡いだ彼の決意は、しっかりと未来に放たれた。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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