ラストマッチを終えた青森山田の黒田剛総監督。高校サッカーを振り返り「考えれば考えるほど涙しか出ない」【選手権】

2023年01月04日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「ひと言で言ったら、すごく楽しかった」

青森山田の黒田剛総監督。選手権ラストマッチを終え、高校サッカーを振り返った。金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 [高校選手権準々決勝] 神村学園 2-1 青森山田/1月4日(水)/等々力陸上競技場

 最後の選手権が幕を閉じた。

 神村学園との選手権準々決勝、青森山田は前半34分にショートカウンターからMF中山竜之介が先制点を決めたものの、後半16分と20分に連続失点。終盤の反撃は実らず、1-2で敗れた。

 来季からFC町田ゼルビアの指揮官に就任する黒田剛総監督にとっては、これが高校選手権のラストマッチとなった。試合後には目頭を熱くしながら心境を語った。

「約30年という高校サッカー生活のなかで、ひたすらもがき苦しんだ時代もあったし、またはこの6年、7年は青森山田の時代を作ることもできました。ひと言で言ったら、すごく楽しかった。サッカーは常に勝てるわけではないので、正木(昌宣)新監督としてはほろ苦い船出になったと思いますけど、この経験が次の青森山田、もっと強い青森山田を作っていくには良いスタートになったと思う。これからは外から、きちっと見守っていきたいと思います。楽しい、良い経験をさせてもらいました」
 
 28年間にわたり青森山田を率いてきた黒田総監督にとって、高校サッカーの指導生活はどんな日々だったのだろうか。

「ひと言では難しいんですけど、まさかこんな強い青森山田になると思って始まった私の監督生活ではないです。地域、学校、教え子とか、いろんな関係者に支えられながら、気づけば中高で選手が330人もいるわけで、18人から始めたのが嘘よのような大きい組織になって、これだけ全国のサッカーファンにも夢や感動を与えられるチームに成長したのは、すごく幸せなこと。離れることを考えれば考えるほど涙しか出ませんけど、カテゴリーが変わっても、勝利を目指したメンタリティと取り組みは消えることはないと思いますので、また違うステージで頑張って結果を出したい」

 全国屈指の強豪校に育て上げるには、並々ならぬ努力があっただろう。「ここまでチームを強くできた要因として、大事にしてきて良かったと思うことは?」と聞けば、黒田総監督はこう答えた。

「学校というのもあって、教育、人間作りという土台にサッカーを乗せてきたのは、ずっとブレずにやってきた。また、選手よりも負けず嫌いを全面に出してやってきました。自分に少し余裕が出てからは、雪を利用できるようになった。これによって、尚志など雪国のチームが強くなっている事実もあるので、これはもう将来、大学に行ってからも大いに反映されるパワーになると思う。雪国サッカーはどんどん出てきてほしいと思うし、私も雪から出てきた指導者として、J1に行きたいとも思うし、あわよくば映画化されるくらいの活躍をしたいですね」

 取材を終え、「ありがとうございました」とお辞儀する黒田総監督に、ミックスゾーンでは「お疲れ様でした」という労いの声が相次いだ。きっと、多くの高校サッカーファンも同じ想いでいるだろう。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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