怒涛の反撃も惜敗した明桜。かつて中学生に負けていた“谷間の世代”がしっかり刻んだ成長の跡【選手権】

2023年01月01日 森田将義

本格強化5年目。最後は2バックで追いすがったが…

善戦虚しく初戦で敗退した明桜。主将の佐藤拓(左)は前線からチームを牽引した。写真:梅月智史

[高校選手権2回戦]明桜 0-1 飯塚/12月31日(土)/県立柏の葉公園総合競技場

 2年ぶりの選手権は飯塚に敗れて、初戦敗退に終わった。それでも、選手が見せた勇敢な姿は確実に訪れた観客の姿の目に焼き付いたのは間違いない。国見やヴィッセル神戸U-18での指導経験を持つ原美彦監督の下、本格強化5年目を迎えた明桜が、着実にチームとして成長していると感じた一戦だった。

 試合のキーポイントとなったのは、飯塚のキーマンであるMF池田悠夢(3年)とFW芳野凱斗(3年)への対策だ。「我々みたいなスーパーな選手がいないチームは、総合力とモビリティーを活かして、全員でカバーし合わないといけない」(原監督)と、両選手に対しては複数人で対応。彼らを起点にはじまるグループでの崩しをさせずに試合を進めていくが、前半40分にはその警戒していた芳野と池田に中央を崩され、最後はMF原翔聖(2年)に先制点を決められた。

 追い掛ける展開となった明桜は後半4分、FW臼田成那(2年)のポストプレーから右サイドのMF吉田秀(2年)がシュート。同15分にはサイドチェンジを受けたMF藤山成弥(3年)の左クロスが直接ゴールに向かったが、枠を捉えることはできない。試合終盤は交替カードを切り、2バックで1点を狙いに行ったが、最後までゴールネットを揺らせず、0-1で敗れた。

 原監督は試合後、「接戦になるのと想定していたなか、失点した場面と相手ゴール前でのフィニッシュを見ると、ゴール前の精度をもっと上げなければいけないと感じた」と反省を口にしつつ、選手たちを称えた。

「関東に来る前までの2週間、雪でまったく何もできない状況だったなかで、子どもたちはすごく良いパフォーマンスを見せてくれました。最後まで諦めずに点を取りに行こうとしていた。リスクを冒してまで点を取りに行こうとした姿勢は褒めてあげたい」
 
 今季の3年生は、明桜が全国大会への出場から長らく遠ざかっていたタイミングで入学を決めた選手たちだ。ベガルタ仙台ジュニアユース出身のFW佐藤拓実(3年)や藤山など実力者はいたが、攻撃は彼ら頼みの場面が多かった。

 ミスが起きれば、他人に責任を押しつけ、チームが悪い雰囲気になったら、誰も喋らなくなっていた。1年目に行なった県内の中学生チームとの練習試合で敗北を喫し、ずっと「谷間」と言われ続けてきた世代でもある。「本当に悔しかった。谷間と言われるほど自分たちが弱くないのは分かっていたのですが、なかなか嚙み合わなかった。それも悔しかった」と佐藤は振り返る。

 ただ、多くの選手が原監督と共に寮生活を送りながら、サッカーと学業に本気で向き合い続けてきた結果、少しずつ変化していった。原監督が掛け続けた「上手い選手ではなく、チームを勝たせられる選手が本当に良い選手だ」との言葉は、今では彼らに根付いている。

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