アトレティコのカンテラからイキのいい若手MFが台頭。結束力がぐらつき始めているチームの救世主になれるか

2022年12月30日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

14歳まではマドリーのカンテラでプレー

コパ・デル・レイでトップチーム初ゴールを挙げたバリオス。(C)Getty Images

 先日、ウォルバーハンプトンに移籍したマテウス・クーニャの父親から、「守備的でFWに不向きなサッカー」とダメ出しされたり、ジョアン・フェリックスが退団を希望していることが明らかになったりと、ディエゴ・シメオネ監督を中心に高い結束力を誇っていたアトレティコ・マドリーがぐらついている。

 11年間という異例の長期政権を築いてきたシメオネ監督にとっては真価の発揮のしどころだが、そんな指揮官の苦境を救うべく、存在感を高めている若手がいる。スタメンに抜擢されたコパ・デル・レイ2回戦のアレンテイロ戦で、チームの2点目をマークするなど勝利(3-1)に貢献したパブロ・バリオスだ。

 バリオスは元レアル・マドリーのカンテラの選手で、14歳の時に戦力外通告を受け、ライバルのアトレティコに加入した。そんな背景もあって、昨シーズン、UEFAユースリーグでその古巣相手に2得点・1アシストを記録する活躍を見せた時は注目を集めた。Bチームに昇格後もすぐさま定位置を確保。その才能がシメオネ監督の目に留まり、現在に至っている。

 センスの高さを感じさせるのが、ボールを出した後に走ることを怠らないパス&ゴーだ。短い出場時間ながら、攻撃に流動性をもたらす存在になっており、それはまさに現在のアトレティコに欠けている要素でもある。

 パンチの効いたミドルシュート、ピッチ上での堂々とした振る舞い、セントラルMFとインサイドハーフをこなす使い勝手の良さも含めて、今後も出番を増やしそうな条件を兼ね備えている。
 
 元来シメオネは、若手の抜擢には慎重な指揮官だ。カンテラ出身選手はレンタル修行に出すのが通例となっており、過去ではサウール・ニゲスやトーマス・パーテイ(現アーセナル)、今シーズンで言えばマヌ・サンチェス(オサスナ)、ロドリゴ・リケルメ(ジローナ)、セルヒオ・カメージョ(ラージョ・バジェカーノ)らが該当する。

 シメオネ政権下でそのプロセスを踏まずにトップチームに定着した選手は、リュカ・エルナンデズ(現バイエルン・ミュンヘン)くらいだろう。

 現在のチームで、カンテラからアトレティコ一筋を貫くのがコケだ。2009年9月に17歳でデビューし、そのままトップチームに定着した。コケはバリオスにとって憧れの存在であり、プレースタイルを比べると共通点も少なくない。

 もちろん2か月前(第12節のカディス戦)にデビューしたばかりの19歳の若者だ。いきなりコンスタントな働きを求めるのは酷だが、アトレティコのように閉塞感に覆われたチームにおいて何が必要かと言えば、起爆剤となれるイキのいい若手の台頭だろう。バリオスにはその可能性を感じる。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部
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