【広島】クラブ史上最高の助っ人へ。ドウグラスが描く無限の成長曲線

2015年11月07日 小田智史(サッカーダイジェスト)

FKを蹴った瞬間、「これは入った」と確信する感触が足に残った。

囮役の塩谷を上手く使いながら、絶妙なコントロールショットで今季18点目を記録。どこからでも、どんな形でも点を取れる、個の力はチームの快進撃を支えている。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 G大阪戦の55分、ペナルティエリア手前からドウグラスが蹴ったボールが、綺麗な曲線を描いてゴールに突き刺さる。先行逃げ切りを得意とする広島には、願ってもない先制点だった。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・16節 G大阪 0-2 広島

 ドウグラスは、ファウルをもらって、ボールを置いた時点で、ゴールを予感していた。キックポイントではドウグラスと塩谷が時間をかけて言葉をかわしていたが、塩谷曰く「最初は俺が蹴るつもりで、『ドグに蹴っていい?』と聞いた」ところから一転、「やっぱりドグに任せるわ。俺はボールをまたぐよ」と囮役を買って出たために、あのビューティフルゴールが生まれたのだ。
 
「(FKを)蹴った瞬間、足に良い感覚が残ったから、『これは入った!』と思った。プロに入ってから初めてFKを決めたんだ。神様に感謝したい」(ドウグラス)
 
 ドウグラスは今季リーグ3位の18得点を挙げているが、その得点パターンは実に多彩だ。高さを活かしたヘディングシュート、カウンターで持ち込んでのフィニッシュ、PK、そしてエリア外からのクロスに合わせたダイレクトボレーなど、どこからでも、どんな形でも得点してきた。

「守備で我慢して我慢して、決めるところで決め切るのが今年の広島の勝負強さ」(塩谷)だが、その「決め切る」力の一翼をドウグラスが担っているのは、誰の目にも明らかだろう。
 
 広島のシャドーポジションは、緻密な戦術理解が求められる。前任者はクラブの2連覇を後押しした髙萩洋次郎と石原直樹とあって、周囲の期待度は高かった。本来FWのドウグラスは当初「シャドーは難しい」とアジャストに戸惑ったという。

 それでも、ブラジル人助っ人にありがちなエゴイスティックさはなく、ハイレベルな技術と守備にも奔走できる献身性、なにより環境に馴染もうとする本人の努力がチームへのフィットを早めた。その適応スピードは、シャドーにコンバートした森保監督自身、「ここまでフィットするとは良い意味で驚き」と目を細めるほどだった。
 

次ページ最終節でハシェック越えを果たすか。

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