2年ぶりの王座奪還!【広島】CS決勝で勝負を決める一発! 浅野拓磨は”寿人越え”を目指す

2015年12月05日 小田智史(サッカーダイジェスト)

ミスを重ねてプロとしての風格が備わってきた。

今季8ゴールを挙げた浅野は、徐々にゴール前での冷静さが備わってきた印象だ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

「今の拓磨は、経験を重ねれば重ねるほど、それを自分の血肉に変えている。まるで貪欲な獣のように」

 森保監督の浅野評である。アマゾンの王者〝ジャガー〞を異名に取る若武者にとって、それは最高の褒め言葉ではないだろうか。

 最大の武器であるスピードの他に、浅野が新たな可能性を垣間見せたのが第2ステージ12節の清水戦だった。

 75分、ドウグラスのパスを絶妙なトラップでペナルティエリア内に流してDFを置き去りにすると、飛び込んでくるGKの動きを見極め、鮮やかにループシュート。これまでならば外していたシチュエーションで、冷静に相手との駆け引きを制した。本人もこのプレーには手応えを感じていた。

「清水戦のループシュートは、これまでの経験が凝縮されたプレーだった。トラップした段階でGKが出て来るのが見えたので、冷静に浮かそうと思いました。今は自分の特長を出すことに集中していて、それが心の余裕につながっています。試合で持ち味を発揮する下地はできている。ゴール前でも以前より少しは落ち着きが備わってきたかなと」

 3年目にしてリーグ戦初ゴールを決めた第1ステージ6節のFC東京戦で「余裕がなかったので(足を)振り切るだけだった」と話していた頃より、メンタルや一瞬の判断力に磨きがかかったのは明らかだ。

 もちろん、その間幾度となく決定機を外し、苦汁を舐めてきた。同僚の千葉は序盤戦、浅野に「俺なんか30回はミスしてる。まだ1回ミスしただけだろ。お前はまだまだプロじゃない」と言葉をかけたというが、それになぞらえて言えば、浅野もミスを重ねてプロとしての風格が備わってきたというわけだ。

 今季は60分前後で佐藤からバトンを受け、ゲーム終盤にピッチに立つ起用法が定着している。浅野の役割は単純明快、得点を取ることだ。
 
「チームが勝っていれば追加点を取って試合を決める、負けていれば点を取って流れを変える。難しさはありますけど、どんな状況でもゴールが最大のミッションなのは変わらない。FWとしてそこはしっかりクリアできるように臨んでいます」

次ページ偉大なエースの壁を越えなければ、レギュラーの座は掴めない。

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