【U-22日本代表】エースの座を手に入れるために――。今キャンプ最初で最後のアピールに懸ける浅野拓磨

2015年10月28日 小田智史(サッカーダイジェスト)

左足に不安は残るも、全メニューを消化。鳥栖戦に向けてスタンバイOK。

福岡大戦は左足の張りで出場を回避したが、翌日はゲーム形式の練習を含めて全メニューを消化。鳥栖戦に向けて静かに闘志を燃やしている。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 左足の張りを訴えて10月27日の福岡大戦を欠場した浅野は、同28日のキャンプ4日目のトレーニングでは、攻撃パターンの練習やGKを含めた9対9のゲームなど、1時間半に渡るメニューをすべて消化した。痛めていた右膝を無意識のうちにかばい、左足にも反動が出た模様だが、練習試合回避は故障を悪化させないための"予防措置"だと話す。

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「右膝を痛めたのはちょっと前。ただ、そんな大したことはなくて、(プレー)できない状況ではない」
 
 福岡大戦で重きが置かれた「裏を意識した動き」は、浅野が得意とするプレーのひとつだが、スピードスター不在のチームはその戦術へのアジャストに時間がかかった。外から見ていた浅野の目には、どのように映っていたのか。
 
「裏に抜け出す意識は、(動きの)本数を見てもあったと思う。ただ、タイミングが合わなかったり、少しのズレでパスが通らない状況が続いているのは、みんな意識をしている半面、そればかりになってしまっているのかな、と。裏を取るためになにをすべきかを一人ひとりがもっと深く考えるべきで、"アレンジ"が出てくれば裏もより有効になる。そこは僕も含めて今の課題だと思う」
 
 浅野の見解は、「攻撃が縦に縦に急ぎ過ぎたところがあった。もう少し幅であったり、バリエーションが出せれば良かった」というキャプテン遠藤のコメントとも一致する。確かに、少ないタッチ数で相手DFをはがすプレーは徐々に向上している。臨機応変に自分たちの引き出しを使い分けて攻撃をレベルアップできれば、「もっともっと怖いチームになれる」(浅野)という可能性も見出せたようだ。
 
 もっとも、今年A代表デビューを果たすなどブレイクした浅野とて、U-22日本代表で立場が確約されているわけではない。
 
 今キャンプでは故障のため未招集だが、14年のチーム発足時からCFのファーストチョイスとして君臨してきた鈴木をはじめ、欧州組の久保も好調を維持しているとあって、最終予選のメンバー入り、そしてレギュラー奪取を狙ううえではアピールが必要不可欠だ。「(鳥栖戦は)決めるべき人が決めてほしい」と手倉森監督が切望するなかには、当然ながら浅野も含まれているに違いない。
 
 左足の張りの影響で「ちょっと怖がりながらプレーしている感覚がある」(浅野)ため、29日の鳥栖戦出場は指揮官の最終判断に委ねられているが、本人的には貴重な実戦に向けて静かに闘志を燃やしている。
 
「明日、試合に出られるチャンスがあるなら、今自分ができることを100パーセント出すだけかな、と。チームがなかなか得点を取れていないので、少しでもアクセントを付けられたらと思うし、自分の特長をしっかり活かしてゴールという結果に結び付けたい」
 
 日本代表のハリルホジッチ監督の視察が予定されていることを伝え聞くと、鳥栖戦を「アピールの場」と位置付け、「もう一個上のレベル(A代表)でもやりたいと思っているので、そこに少しでも近づけるように、A代表のピッチで満足できるように頑張りたい」と意気込みを語った。
 
 万全の状態ではないが、鳥栖戦で出場のチャンスを掴めたら、颯爽と駆け抜ける浅野の姿に期待したい。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
PROFILE
あさの・たくま/1994年11月10日生まれ、三重県出身。171センチ・70キロ。ペルナSC―八風中―四日市中央工高―広島。今季通算30試合・8得点、J1通算42試合・8得点(第2ステージ15節終了時)。50メートルを5秒9で駆け抜ける若きスピードスター。今季広島でスーパーサブとして台頭し、J1史上初の途中出場でのシーズンふた桁得点達成まであと2点に迫る。
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