野津田にとって、27日の福岡大戦（△０-０）はもどかしい展開だったに違いない。

【U-22日本代表PHOTO】福岡大戦 ０-０
 
「裏を狙う」というチームコンセプトに伴い、４-４-２の左MFに入った野津田は激しいアップダウンを求められた。しかし、本来の持ち味はギャップを突いて攻撃を展開し、自慢の左足でロングレンジからでもシュートを狙うダイナミックさにある。最終ラインから攻撃陣を見ていたDF岩波は「（野津田）岳人はスピードタイプではないので、あれだけ走らせてしまうと、アイツもキツイと思う」とプレースタイルとのギャップが少なからずあったと証言する。
 
「（味方が）落とした後に裏へ走る動きは、ミーティングでも話してチームの共通認識としてあったので、ボールが転がらないピッチのなか、裏のスペースは意識して試合に入りました。ただ、タイミングが合わなかったり、足もとであまり受けられなかった。正直難しさは感じた」
 
　野津田自身もそう振り返ったように、足もとで受けるプレーは制限され、１本目の15分には速攻から関根→遠藤→野津田とつないでクロスを上げるも中央の選手に合わせられず、その３分後には左サイドでパスを受けた野津田の落としから逆サイドに展開した喜田のロングボールも不発。逆サイドでプレーする関根側の攻撃の圧力が高まり、野津田自身は対峙する福岡大のSBに押し込まれる場面が散見されただけに、一夜明けた練習後も「得点が取れなかったのは攻撃的な選手として不甲斐ない」と悔しさを滲ませた。
 
　福岡大戦で初招集の関根が"合格点"のプレーを見せ、鎌田も左MFで試された。海外組の南野も含めて２列目の競争はこれまで以上に熾烈だ。「自分自身に危機感を抱いている」と語った９月の町田戦（●０-１）時に比べて、所属クラブでのプレー機会も減っており、与えられたチャンスで結果を残さなければいけない立場なのは理解している。ただ、周囲を意識するよりもまずは自分らしさ、つまりは自分のカラーを出すことに集中したいと野津田は語る。
 
「競争はチームとしても、個人としてもすごく大事だと思う。だけど、誰かと競う以前に、まずは自分になにができるのか、どこがアピールポイントなのかを大切にして、結果につなげることが先決。福岡大戦のような難しい環境・展開のなかでは、セットプレーをひとつの武器にしないといけないし、そこで１点取れればもっと楽に試合を運べる。苦しい状況でも自分のストロングポイントを発揮して、存在価値を示したい」
 
　2011年のU-17ワールドカップではメンバーから外れ、2013年のU-20ワールドカップでは出場権を逃した野津田にとっては、「世界」と相対するオリンピックへの想いは強い。リオ行きの切符を手にするためにも、アジア最終予選のメンバー入りは第一条件だろう。「最終予選までの少ない残り時間で、どう自分を高めていくかが重要。しっかりアピールして最終メンバーに残りたい」と意気込む"レフティモンスター"が、今キャンプ最後の実戦となる29日の鳥栖戦でどんなプレーを披露するのか見ものである。
 
取材・文：小田智史（サッカーダイジェスト編集部）
 
PROFILE
のつだ・がくと／1994年６月６日生まれ、広島県出身。175センチ・70キロ。シーガル広島―広島Jrユース―広島ユース―広島。今季通算19試合・４得点、J１通算62試合・10得点（第２ステージ15節終了時）。シュートに絶対の自信を持つ"レフティモンスター"。U-22代表ではプレースキッカーとしても期待が懸かる。