森保ジャパンがベールを完全に脱いだ。前半の我慢が、後半のサプライズ付き一気呵成につながった【W杯】

2022年11月24日 清水英斗

前半はミスマッチ、後半はマッチ

森保監督が勝負師としての力量を見せつけた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタール・ワールドカップ・グループステージ第1戦]日本 2-1 ドイツ/11月23日/ハリファ・インターナショナル・スタジアム

 カタール・ワールドカップE組・第1戦のドイツ対日本は、日本が後半に堂安律と浅野拓磨のゴールで2-1と逆転勝利を収めた。前半はミスマッチ、後半はマッチ。前後半でシステム変更とともに、守備のやり方を一変させたことが、森保ジャパンの勝利につながった。

 ドイツは基本システムとして4-2-3-1を敷くが、ビルドアップ時は左サイドバックのダビド・ラウムを高い位置へ上げ、3-2-5の形に変化する。

 一方、日本は4-4-2で守備を行なうため、ドイツのビルドアップの始点と終点が数的不利で、かみ合わない。3枚回しを2トップが追い、5トップ状態を4バックで待ち構えるため、いわゆる「ミスマッチ」と言える。

 ただし、ミスマッチ自体は悪いことではない。ドイツと日本のかみ合わせでは、両サイドハーフの伊東純也と久保建英が誰とも対面せず、いわゆる浮いたポジションになる。彼らが前へ出て、3枚プレスでかみ合わせたり、逆に最終ラインへ降りて5バック化したりと、ミスマッチを動的、瞬間的にマッチさせることは可能だ。

 また、ポジションが浮いた状態でインターセプトに成功すれば、カウンター時にフリーで走り込めるメリットもあり、ミスマッチ自体は良いほうにも悪いほうにも転ぶ。

 ただし、ドイツほどのチームを相手に、ミスマッチが功を奏する守備を行なうのは全く容易ではない。パスが正確かつテンポも早いので、ポジションを動かす時間が少ない。

 33分の失点場面では、ヨシュア・キミッヒからの鋭いサイドチェンジに対し、酒井宏樹と伊東の2人が共に中央のジャマル・ムシアラへ向かってしまい、大外のラウムが空いてしまった。
 
 ラウムが飛び出すタイミングの良さ、キミッヒの判断とキックが早く、そのなかでの守備側の一瞬の判断ミスは、どうしても起こりがちだ。

 それに加えて、ミスマッチから始める守備の起点も、巧妙に消されてしまった。その犯人はトーマス・ミュラーだ。

 日本の守備は、左の久保が前へ出てプレッシングをかみ合わせ、右の伊東は最終ラインまで降りて動的5バックになることが多い。左高右低でバランスを取っている。

 ところが、ミュラーはこの久保の背後に立ち位置を取り続けた。久保がプレスをかみ合わせようと、ニクラス・ジューレへ寄せれば、すぐにミュラーが背後から顔を出し、ボールの逃げ道を作ってしまう。

 これにより、日本はプレッシングのタイミングをつかむことが困難になり、ミスマッチがミスマッチのまま、かみ合う瞬間がなく、前半はひたすら守備ラインを下げられてしまった。

 すると、ハーフタイムに森保監督が動いた。

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