現地紙コラムニストが綴る――武藤嘉紀のブンデス挑戦記「どうなるマインツ!? クラブ最大の功労者は来夏シャルケへ…」

2015年10月21日 ラインハルト・レーベルク

ハイデルのマインツにおける最後の大きな補強は武藤嘉紀に!?

9節のドルトムント戦で、一昨シーズンまで共に戦い、今や強豪チームを率いるトゥヘル監督(後ろ姿)を激励。来夏はハイデル・マネジャー自身がステップアップを遂げることになるようだ。 (C) Getty Images

 クリスティアン・ハイデル抜きのマインツを想像できる人間は、この町にいない。しかし、23年来のマインツの戦略的頭脳であるこのマネジャーとの別れは、どんどん現実味を帯びてきている。
 
 ハイデルの元にはシャルケから、2016年7月1日より強化担当となる契約書が、あとは彼が署名するだけで良い状態で届いているのだ。
 
 マインツとハイデルの契約は2017年6月30日まで残っているが、彼がすでに心を決めている、つまりシャルケへ行くつもりであるという兆候は強まる一方である。
 
 ハイデルのマインツでの功績は大きすぎる。ゆえにその最大の功労者の願いを、ハラルト・シュトルツ会長は拒むことができないだろう。
 
 ハイデルは、きちんと自分の後継者を見つけてからマインツを去るつもりでいる。このクラブは、彼の"作品"である。
 
 1992年、自動車販売店のオーナーでありながら、副業的にこのクラブの強化に携わるようになった時、マインツは2部リーグにいて、年間予算は350万マルクであった。それが現在のマインツは、1部リーグ参戦連続7シーズン目に突入しており、年間収益は歴代最高の1億ユーロに達する見込みだ。
 
 ハイデルのクリエイティブな仕事とハードな交渉がなければ、このような爆発的な成長はなかっただろう。1987年以来会長を務めるシュトルツ会長も、ハイデルに全幅の信頼を置くとともに、背後で彼を支えてきた。
 
 ハイデルのいないマインツを運営するのは、まるで馬力の大きい車からエンジンを取り外しておきながら、運転手に向かって「同じ速度で走るように」と命ずるようなものだ。この有能なマネジャーへの連帯を表明するファンたちの声で、今インターネットのフォーラムは溢れている。
 
 これまでに何度も、経済的にも、スポーツ的にも、マインツよりも可能性のあるクラブからオファーがありながらも、ハイデルはこれを断ってきた。しかし、今回は違うだろう。それは、シャルケでのチャレンジが刺激的だからだ。
 
 2億ユーロの収益に、7千万ユーロの人件費(マインツでは2650万)、チャンピオンズ・リーグに継続して出場できる実力、ドイツで最も優秀な育成部門、毎試合完売する6万人収容のフェルティンス・アレーナ……ハイデルも、自分のキャリアのなかで一度ぐらいは、そのような大きな車輪を回したいはずである。
 
 そうなれば武藤嘉紀は、ハイデルがマインツで行なった、最後の大きな補強ということになる。

次ページマインツの頭脳であり、顔でもあった代替不可能なマネジャー。

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