【回想】北アイルランド――かつて世界を幾度も驚かせたEURO初出場国

2015年10月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

アイスランドとは違い、ワールドカップでの実績は有している。

ホームゲームでの本大会出場決定で喜びもひとしお。オニール監督を胴上げして、選手たちは自らの偉業達成を祝った。 (C) Getty Images

 EURO2016予選で、最終節を待たずにグループFの2以内を確定させた北アイルランド。これにより、初の本大会進出を決めた。1964年大会以来、14度目のチャレンジでようやく成し得た偉業だった。
 
 マイケル・オニール監督をはじめ、北アイルランドの誰もが「夢が叶った」と狂喜乱舞したのは言うまでもない。
 
 イングランド・プレミアリーグの中堅クラブ、同国下部リーグ、そしてスコットランドでプレーする選手がメンバーの大部分を占める北アイルランドは、英国4協会でも最も力が劣るといわれてきたが、今予選では各試合で少ないチャンスを確実に活かして勝点を積み重ね、悲願を成就した。
 
 ちなみに今予選ではすでに、アイスランドも並み居る強敵を抑えて本大会進出を果たしている。出場国が24か国に増加したこともあり、来夏にはこれまでとは少し違う様相のEUROが見られるかもしれない。
 
 ただ、アイスランドがメジャーイベント初出場なのに対し、北アイルランドはもうひとつの大舞台、ワールドカップには3度出場している。しかもそのうちの2度で、世界を驚かせているのだ。
 
 最初は1958年。スウェーデンで行なわれたこの大会は、17歳の天才ペレを擁するブラジルが初めて世界王者となったことで人々の記憶に残っているだろうが、北アイルランドはこの時、初出場でグループリーグ突破を果たしている。
 
 前回王者の西ドイツ、戦前には決勝にも進出したことがあるチェコスロバキア、そして南米の雄アルゼンチンとの同組という厳しい環境にありながら、北アイルランドはチェコスロバキアを1-0で下し、アルゼンチンには1-3で敗れるも、西ドイツとは2-2で引き分けた。
 
 2位の座が懸かったチェコスロバキアとのプレーオフでは延長の末に2-1でこれを制し、フランスとの準々決勝へ駒を進めた北アイルランド。ジュス・フォンテーヌ、レイモン・コパという世界的名手を擁したフランスには0-4で完敗するも、初出場国にとっては十分すぎる結果であり、世界も北アイルランドという存在を認識した。
 
 そこから、次にこの英国4協会の一角が世界から注目を集めるのには、24年の年月を要した。この間、この"弱小国"からはジョージ・ベストいうスーパースターが誕生し、マンチェスター・ユナイテッドで世界中のサッカーファンを魅了したが、彼が輝くのは赤いユニホームを着た時だけだった……。
 
 しかし皮肉なことに、ベストが一線を退いた後で、緑のユニホームは躍動し始める。

次ページ世界の舞台での沈黙は来夏、30年ぶりに破られることになる。

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