それでも不安な森保采配。プレスが機能しない時間帯になぜシステムを修正しなかったのか【コラム】

2022年09月24日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

アメリカ戦で実践できた“ドイツ攻略の一手”

日本を勝利に導いた森保監督。エクアドル戦ではどんな采配を見せてくれるのか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 2022年9月23日、日本代表がドイツのデュッセルドルフでアメリカ代表との親善試合に臨んだ。結果は2-0の完勝。相変わらずセットプレーに希望の光は見えないが、それなりに手応えを掴めた試合だった。

 何より素晴らしかったのが前半だ。鎌田をトップ下に置く4-2-3-1システムでスタートさせた日本は、アメリカの4-1-2-3システムに対してCFの前田と鎌田が敵のCBコンビ、守田と遠藤の2ボランチがデラトーレとマッケニーの両インサイドハーフをケアするなどして、アンカーのアダムスを孤立させる形で主導権を握った。システムの構造を利したその戦いぶりが実に見事だったのである。

 高い位置で何度もボールを奪い取り、そこからチャンスに繋げる形こそドイツ攻略の一手
になるはずので、アメリカ戦でそれを実践できたのは大きい。そんな中で決定的な仕事をしたのが鎌田だ。24分、守田のお膳立てから丁寧なシュートで先制弾。ゴールこそこのひとつだけだったが、他のシュートも含めフランクフルトでの好調ぶりを見せつけるシーンは多かった。

 この日のパフォーマンスだけで判断すれば、鎌田が軸のチームにすべきだろう。守備面でも前田と良い連係が取れていたし、少なくとも彼をスタメンから外す理由は現時点で見当たらない。とにかく、このタイミングで攻撃陣に頼れる人材が出てきたのはグッドニュースだ。

 鎌田と同じく不可欠な戦力に映ったのが遠藤と守田のボランチコンビ。相手のパスコースを消す動きは秀逸で、攻守の繋ぎ役としても機能したふたりの貢献は11月のワールドカップ本大会に向けて明るい材料だった。

 一方で気になったのは後半のパフォーマンス。三笘のスーパーゴールが相当なインパクトを残したものの、2-0になる前まではアメリカに押し込まれる時間帯がそれなりにあった。日本のシステム(4-2-3-1)が相手の攻撃時の布陣(3-4-2-1システム)にハマらなかった状況下で、なぜ森保監督はシステムを修正しなかったのか。

 前からのプレスが機能しなければ5バックにするなどして、あえて引いて守る。もしくは田中あたりを投入し、アンカーを置く4-3-3システムに変更して、インサイドハーフふたりで敵の2ボランチを消すなど、親善試合だからこそチャレンジしていい策があったはずだ。いずれにしても、1-0の段階で試合のテンポをあえて落とす采配を見てみたかった。
 

 アメリカの拙攻に助けられたものの、例えば対戦チームがドイツやスペインだったら……。強豪国を相手に守備がハマらなかったら、そこから一気に呑み込まれる可能性はある。そうした観点からも、アメリカ戦での修正力のなさに多少なりとも危機を感じた。

 結果的に三笘の投入が当たり、見栄えのいい試合になったのは確かだ。とはいえ、システムの構造的に噛み合わせが悪く、CF町野のプレスが中途半端になり、アメリカに付け入る隙を与えた甘さは看過できない。もちろんこの段階で手の内をすべて見せる必要はないが、それでも……。流れを失いかけた時間帯にポジティブな変化をもたらすことができなかった点で、森保采配にはやはり不安が残る。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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