15試合ぶりの無得点に終わった横浜。札幌にスコアレスドローも、最悪の結果ではない。指揮官の交代策も理にかなっていた

2022年09月19日 藤井雅彦

最大の強みは効力を発揮しにくい状況だが…

横浜はホーム札幌戦で0-0の引き分け。4連勝がかかる一戦でドロー決着も、喜田(8番)は「悲観しすぎる必要もない」と語る。写真:滝川敏之

[J1第30節]横浜0-0札幌/9月18日/日産スタジアム

 5連戦の5戦目となった札幌戦は、攻撃力自慢の横浜にしては珍しいスコアレスドローに終わった。

 ちなみに0-0は今季2度目で、1度目は豪雨と強風の影響で"泥んこサッカー"を余儀なくされた3月18日の鳥栖戦なので、実質的には初めてと言っていい。

 加えて無得点は5月21日の福岡戦以来、実に15試合ぶり。VARの介入により得点が取り消しとなった点も含めて、ややフラストレーションが溜まった感は否めない。

 札幌のオールコートマンツーマンは精度だけでなくテンションも高かった。残留争いの状況がそうさせたのか、深井一希の長期離脱が仲間の闘志に火をつけたのか、いずれにしても手を焼いた。

 それどころか前半はサイドチェンジを効果的に使ってきた札幌に決定機を作られ、22分にはルーカス・フェルナンデスに際どいシュートを許している。前線からのプレスが空振り、反対サイドに広がっているスペースを使われる。ACLラウンド16の神戸戦(2-3)で露呈した課題を修正しきれず、またしてもピンチを招いた。

 前後半含めてGK高丘陽平のファインセーブがなければ、勝点1すら手に入らなかったかもしれない。そういった意味で「勝ちたかったという思いはあるけど、悲観しすぎる必要もない」という喜田拓也の言葉は的を射ている。裏返せば、負ける展開まで考えられたゲームで、辛抱強く勝点1を拾ったのだから、少なくとも最悪の結果ではない。

 前述のVARの介入以外にもチャンスはあったが、いわゆる決定機に該当するシーンはほとんどなかった。先発の入れ替えを最小限にとどめながら5連戦を戦ってきたことによる体力消耗だけでなく、宮市亮や西村拓真といった主力の負傷離脱がチームとしてのギアチェンジを難しくしている側面もある。
 
 後半から出場した藤田譲瑠チマは「最後の質の部分は、途中から入ってきた選手たちが一つひとつのプレーに集中して、もっと正確にやらないといけなかった。後半は相手の強度も落ちていたので、どちらかというと自分たちの問題」と悔やみ、矢印を自チームへ向けた。

 ボール支配率こそ上回っているものの、決定打を欠いたのは途中出場した選手たちが見せ場を作れなかったのと無関係ではないだろう。

 藤田に同調するように言葉を発したのは、起用法にかかわらず常に決定的な仕事を求められている仲川輝人だった。

「もっと交代選手がクオリティを出さないといけないし、こういう試合を勝ちにもっていきたい」

 ここまでを振り返っても、横浜は11人だけで戦うチームではない。序盤戦の連戦では、ほぼ無条件でターンオーバーを敢行。疲労蓄積と負傷発生のリスクを軽減させ、さらに体力温存によって試合途中のギアチェンジを可能にした。コロナ禍における交代枠5枚への変更は、選手層で勝負している横浜にとって間違いなく追い風だった。

 最大の強みはシーズン最終盤へ来て効力を発揮しにくい状況になりつつあるが、2位の川崎とは勝点5差のセーフティリードを保っている。逃げ切るには十分な"貯金"だろう。これ以上の負傷発生だけは避けたいケヴィン・マスカット監督のあらかじめ決めていたような交代策は、それはそれで理にかなっていた。

取材・文●藤井雅彦(ジャーナリスト)

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