数的不利をはね除け清水を打ち破ったEスタのドラマ。サンフレ柏好文は先制点アシストを自画自賛「僕くらいのクオリティになると…」

2022年09月05日 寺田弘幸

川村が憧れのスタジアムでヒーローに

丁寧なラストパスで川村の先制点をアシストした柏。チームの勢いにも手応えを示した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第28節] 広島2-0清水/9月3日/エディオンスタジアム広島
 
「めちゃくちゃうれしいですね。でも実感はないです、2ゴールを決めたって」
 
 子どもの頃から憧れてきたEスタで、ついにサンフレッチェ広島に勝利をもたらすヒーローとなった川村拓夢は、ミックスゾーンで取材に応じているときも夢心地だった。
 
 65分に塩谷司がファウルで相手の決定機を阻止し、VAR判定によって退場を告げられ、10人になったなかでも、5戦負けなしと好調だった清水を打ち破った。このEスタのドラマを、2人のベテランの言葉とともに振り返っていこう。
 
 佐々木翔は10人になったあとの戦況を落ち着いて見極めていた。
 
「やりながらどうなるのかうかがっていたっていうのが正直なところ。引いて守れば守れるかもしれないけど、僕らも相手が1人いなくなった経験があって、そのなかで数的同数を作られたときは1人多くてもピンチになっていた。だから逆にこっちが同数で攻めるときはチャンスが生まれることも理解していた」
 
 選手たちは守り切って勝点1を確保する選択をせず、前に出ていくチャンスを狙っていた。それはベンチも同じ。ミヒャエル・スキッベ監督が75分にドウグラス・ヴィエイラと川村をピッチに送り出すと、2人が指揮官の期待に応えて好機を生み出した。
 
 82分、D・ヴィエイラが身体を張って起点を作り、川村がルーズボールの争いに勝つと、左サイドに開いていた柏好文にボールが渡った。
 
 ここからは、猛然とゴール前へ走っていく川村の動きをしっかりと見ながら、柏が自画自賛するクオリティの縦パスを披露した。
 
「相手を2人引き付けて、(川村)拓夢が入ってくるスピードとスペースを把握してあのパスを出しましたけど、僕のクオリティじゃないとあれは出せないかなと(笑)。普通だったらゴロで出して流れていっちゃうけど、僕くらいのクオリティになるとチップキックで柔らかくおしゃれに置いておけるんです」

 柏の優しいラストパスに川村が左足をうまく合わせて均衡を破る。すると、アディショナルタイムには川村がハーフウェイラインの手前から、ペナルティエリアの外にポジションを取っていたGK権田修一の頭上を抜く超ロングシュートを決めてみせた。

 近い位置の特等席でロングシュートを眺めていた佐々木は、不思議な時間を体験したという。

「ちょうど僕はきれいな弾道が見えていた。回転もきれいだし、コースもほぼ真ん中で、距離も足りないと思わなかった。最高でしたね。ただボールが飛んでいくだけでしたけど、何か不思議なものを感じました」
 

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