マドリーを相手に“最も可能性を感じさせた”鎌田大地。カタールW杯でも日本代表の希望だ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2022年08月29日 小宮良之

両輪がかみ合うことで、スペインと欧州を制した

マドリー戦では決定機を逃したものの、好プレーを見せた鎌田。(C)Getty Images

 欧州スーパーカップでレアル・マドリーはフランクフルトを2-0と下し、見事に戴冠している。僅差だが、マドリーが力の差を見せつけた試合と言えるだろう。

 前半、マドリーは自陣でのミスから鎌田大地に決定機を作られたが、GKティボー・クルトワが破格のセービング力で救った。これを潮目に攻勢を増し、前半36分にCKから2度競い勝った後、先制点を押し込む。形勢を有利にした後は、のらりくらり。64分にはカリム・ベンゼマが追加点を決め、堅牢な守りで勝機を与えなかった。

 マドリーの強さの本質は、クルトワのセービング力、ベンゼマのゴールを作り出す力にある。その両輪がかみ合うことで、昨シーズンはスペイン、欧州を制した。二人の技術は究極的で、シュートストップがうまい、決定力がある、では表現しきれない。止められないはずのシュートを止められるし、ゴールを創造する知性と技術が横溢しているのだ。

 しかし、真の王者は「個」だけでは収まらない。

 イタリア人指揮官カルロ・アンチェロッティの真骨頂と言えるか。撓むディフェンスは見物である。相手を受け止めながら、死地に誘う。攻めさせる、という点で主導権を握り、相手の足を使わせ、気持ちをはやらせ、頭を疲れさせる。消耗戦で上回り、手足をもぐのだ。

 これは、戦力的に上だからこそできるマネジメントと言えるだろう。各ポジション、優勢になる局面を作ることができると、時間を追うごとに優勢になる。必然の流れだ。

【画像】ビッグチャンスをクルトワが好セーブ。鎌田は天を仰ぐ
「鎌田の決定機を救ったのが試合のターニングポイントだった」
 
 スペイン各紙は、そう試合をジャッジしている。
 
 戦力的に弱者であるフランクフルトが勝利するには、鎌田がチャンスを決め、そこで優勢を保つしかなかった。弱者は出発点で、薄氷を履むような戦いを強いられる。もともと、見通しは厳しい戦いだった。たとえ鎌田が決めていたとしても、マドリーははまだ"武力"を隠していて、勝利には直結しなかったはずだが……。

 翻って、日本はカタール・ワールドカップでドイツ、スペインと対決するが、フランクフルトとマドリーとほぼ同等の実力差がある。あらゆる観点から戦略を決め、戦術を的確に運用しても、運に味方してもらえなかったら、戦況は厳しくなる。もっと言えば、呆気ないほどに敗れるだけだ。
 
 その現実を、日本は改めて認識すべきだろう。
 
 敗れたフランクフルトで、攻撃で一番可能性を感じさせたのは鎌田だった。ゴールは外したが、中盤でプレーメイクし、前線でチャンスを作り、ルカ・モドリッチ、ダニエル・カルバハルにも容易に間合いに入らせなかった。今の日本代表で、その存在は破格だ。
 
 カタールでも、鎌田が希望であることは間違いない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。



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