ACLでも光る攻守の充実ぶり。浦和が描く新たな“勝利の方程式”

2022年08月23日 本田健介(サッカーダイジェスト)

全北現代との準決勝へ

ゴールを喜ぶショルツ(写真左)と明本。浦和は攻守に質の高いプレーを見せた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[AC準々決勝]浦和4-0パトゥム・ユナイテッド/8月22日/埼玉スタジアム2002

 2試合続けての快勝。浦和のアジア王者への大きな一歩、東地区チャンピオンへの道が、大きく開けた印象だ。

 準々決勝のパトゥム・ユナイテッド戦の約1時間半前、神戸が全北現代に延長戦の末に敗れる姿を目にしていた。ピッチに座り込んだ神戸の山口蛍、酒井高徳らの下へ酒井宏樹が歩み寄り、何やら会話を交わしている。槙野智章によると、神戸の面々は、アジア制覇への想いを浦和へ託したという。

 ラウンド16からは中2日で、コンディション調整は非常に難しかったはず。だが、先発7人を入れ替えた神戸とは異なり、浦和はスタメンをひとり変えたのみ(左サイドハーフの大久保智明→関根貴大)。5-0で快勝したジョホール・ダルル・タクジム戦の勢いを生かそうと、好調な選手たちをピッチへ送り出した。

 すると開始49秒にCB岩波拓也の素晴らしいフィードに抜け出した松尾佑介がネットを揺らす。ただVAR判定でゴールを取り消されると、25分には左サイドからカットインした関根がコースを狙ったシュートで再びネットを揺らすも、こちらも微妙なオフサイドの判定でゴールを認められなかった。

「2度助けられ、何か起こせそうな気配」

 パトゥム・ユナイテッドを率いる手倉森誠監督が感じ取っていた空気は、浦和にとっては嫌な雰囲気。ここでリズムを崩してもおかしくなかった。

 それでも、チームに自信が漲っているからこそ、さらに攻勢をかけられたのだろう。

 32分には左サイドからの関根のパスを受け、ペナルティエリアに入ったダヴィド・モーベルグが左足を強振。強烈な一発が突き刺さり、3度目の正直で先制点を奪う。

 42分には岩尾憲のCKをニアサイドで岩波拓也が頭で合わせて追加点。反撃へパトゥム・ユナイテッドが形を変えてきても、相手の動きを冷静に捉え、対応する戦術的な成熟度の高さも示した。

 一時、相手に押される時間もあったが、65分には伊藤敦樹がパスカットから持ち上がり、ボールを受けた小泉佳穂がチーム3点目を挙げ、72分には途中出場の江坂任と明本考浩の連係で4点目。2試合続けての快勝を飾ったのだ。
 
「お互いの顔を見ながら、お互いの位置を確認しながら、ポジションを取ったり、そこを見つけられる選手が増えてきたので、AとBだけでなく、3人目、4人目が上手く使えるようになり、考えるというより、感覚的に動けています。それがプレースピードにもつながっています。その点では、すごく成熟してきたと感じますね。ボールが滞りなく流れている感覚があります」

 ラウンド16の後にそう手応えを語っていたのはチームのコントロールタワーである岩尾だ。

 指揮2年目のリカルド・ロドリゲス監督の下、過密日程や新型コロナウイルスの影響でまさかの出遅れを見せたが、ここにきてチームの完成度がグンと上がってきた。

 直近の公式戦4試合で計18ゴールの攻撃面をクローズアップされることも多いが、守備陣はその4試合すべてをクリーンシートで終えている。守護神の西川周作、CBコンビの岩波、アレクサンダー・ショルツを軸とする堅牢ぶりも実に素晴らしい。

「皆さんが感じてるように(岩波)タクヤとのコンビネーションはここ最近のみならずシーズンを通じてかなり良い関係にあるよ。彼に僕から何か言うことはないね」

 ショルツは岩波との関係性を冗談交じりに語るが、その姿からも充実ぶりが窺える。 

 ゴールを奪えているからこそ、守備にも余裕が生まれる。それは逆も然りで、松尾を頂点する前線からの守備がハマり、相手が出方を変えても柔軟に対応してボールを奪えるからこそ、良い攻撃へつなげられる。

 なおかつ、先発を張ってもおかしくないMF江坂任、FWキャスパー・ユンカーを後半途中に投入してダメを押す。

 勢いのある攻撃で先制点を奪い、組織的な固い守備でゲームを展開しながら追加点を狙い、切り札投入でゲームを締めにかかる。

 まさに"勝利の方程式"を描けている今の浦和は強い。

 選手たちは「次が大事」と中2日で迎える準決勝・全北現代戦へ慢心も感じさせない。

 準決勝に勝利し、東地区の王者に輝けば、来年2月には西地区の王者とホーム&アウェーのACL決勝が待つ。

 ラウンド16から準決勝の3試合をホームの埼玉スタジアムで戦えるメリットも生かして、浦和がアジアの階段を力強く登ろうとしている。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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