【鹿島】興梠に「持ってない」と指摘された、らしくない敗戦

2015年09月26日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

チャンスを逃してミスから自滅を招いたのは、ある意味で必然。

元チームメイトの興梠(30番)から「持ってない」と指摘された“常勝軍団”。昌子(3番)もこの敗戦を重く受け止めているようだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 曽ヶ端のファンブルにいち早く反応して決勝点を奪った興梠は、「心の底から強いなと感じた」と古巣を称えながら、「勝ち切るというところでは、まだまだ鹿島も"持ってないな"」と言及した。

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 残念ながら、まさにそのコメントどおりのゲームだった。ハイテンションな序盤こそ、一進一退の展開のなかで両チームにゴールが生まれたが、徐々に鹿島が主導権を掌握。両サイドからシンプルに展開し、ダヴィと金崎の2トップを絡めた攻撃で浦和ゴールに迫った。
 
 前半に3つ、後半に5つ。合計8つの決定機を作り、シュートは27本を記録。ともに浦和(決定機3、シュート10)の3倍近い数字である。
 
 それでも、勝てなかった。
 
 確かに浦和のGK西川は何度も素晴らしいセーブを見せていた。しかし「裏を返せば、僕らが(西川)周作さんを目掛けてシュートを打っていたような感じも多かった」(昌子)のも事実だ。
 
 金崎の突破は鋭く、日本代表CBの槙野を翻弄した。昌子はセットプレーで競り勝ち、何度も際どいヘディングを見舞った。それでも、「絶対に入れさせないという浦和の気迫」(昌子)の前に、最後まで2点目を奪えなかった。
 
 決め切るべきチャンスを逃し、ミスから自滅を招いたのは、ある意味で必然と言えよう。試合巧者らしくない敗戦。上位対決で敗れた直接的なダメージ以上に、粘り強く勝ち切った浦和に"お株"を奪われた印象が残る。互いにプレーインテンシティの高い好ゲームだったがゆえに、なおさらもどかしさを覚える。
 
 なにより、鹿島は勝つことで名声を上げてきたチームである。苦しみながらも、勝負どころを見極めて勝つ。抜け目なく勝点3をもぎ取る。それこそが鹿島イズムだ。選手たちは試合後、口々に「やりたいサッカーはできていた」と語ったが、そこが評価基準ではない最たるクラブが鹿島のはずだ。
 
 ミスを犯した曽ヶ端、本来のダイナミズムを欠いた柴崎を除けば、軒並み悪くないパフォーマンスを見せていた。しかし、プロセスだけでは意味がない。鹿島の選手たちは、誰よりもそこを理解しているだろう。
 
 最後の精度、若い選手と監督の経験値――。チームとして高めるべきものは少なくない。ただひとつ間違いなく言えるのは、「優勝するチームは、こういう試合を勝ち切る」(昌子)ということだ。
 
 第2ステージ首位の広島との差は勝点で3、得失点差では12まで開いた。これ以上、足踏みはしていられない。浦和から受けた厳しいレッスンを、是が非でも次につなげたい。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)
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