【仙台】指揮官の評価にも満足はせず… 20代の新サイドハーフコンビは先輩コンビを超えられるか

2015年09月20日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

守備面での貢献度が高い金久保&奥埜だが、課題は自陣からの推進力。

積極性とセンスの光る奥埜。移籍1年目の金久保とのサイドハーフコンビは、今後のチームにとって面白い武器となりそう。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 スターティングメンバーには、金久保と奥埜の名前が並んでいた。リーグ全体を見渡しても屈指のテクニシャンであり、左サイドハーフとして今季のほとんどの試合で先発してきた野沢はベンチ。そしてキム・ミンテがボランチに定着してから野沢と反対サイドに陣取ることとなった梁は、メンバー表から考えれば中盤の底に配置されると予想された。
 
 果たして、第2ステージ・11節の湘南戦は右サイドハーフに金久保、左サイドハーフに奥埜がポジションを取ってキックオフの笛が鳴り響いた。ともに試合開始からピッチに立つのは4度目、両翼としてプレーするのは1-0で勝利した前節・名古屋戦に続いて2度目だ。そして、やはり梁は富田とコンビを組んで2ボランチの一角に入った。
 
 スペースを上手く活用する、足もとの技術に優れる、寄せられても簡単にボールを失わないなどの点で、金久保と奥埜の間に共通項は決して少なくない。「サイドに流れるのか、スペースに入るのか。的確に判断してプレーしてくれていた」と渡邉監督が語るように、状況に応じて選手配置を脳内でアップデートしながら戦える判断力も強みだろう。
 
 攻撃面だけではない。「サイドハーフの守備のタスクは(仙台の戦術のなかでは)難しい部分があるが、ふたりは忠実にこなしてくれた。そのおかげで大きな破綻なく90分を過ごすことができた」(渡邉監督)。
 
 その点では奥埜も手応えを感じているようだった。だが一方で、満足いくレベルには達していないとの不満もミックスゾーンでの言葉には見え隠れする。
 
「僕には運動量が求められていると思う。たとえ自陣深くまで戻ることになっても、(切り替えの時に)そこから前までパワーを持って出て行くことが必要で、それをもっと出せれば攻撃でも貢献できる」
 
 確かに、押し込まれる展開の続いた後半は金久保も奥埜も自陣深くまで戻る献身性を見せたが、その後の推進力という面では物足りなさが残った。もちろん前半からサボることのないふたりに「もっと走れ」とは酷な注文かもしれない(奥埜の走行距離は両チームトップの12.24キロ、金久保は自チームで奥埜に次ぐ2位の10.77キロ)。
 
 しかし、野沢にしても梁にしてもパスで決定機を創出するだけの選手ではない。高い精度を誇る右足で、ゴールマウスを何度も強襲してみせた。それを考えると、今日のサイドハーフコンビがともにシュート0本(結局、仙台の得点はR・ロペスのPKのみで湘南と1-1の引き分け)では、相手に怖れられる攻撃をできたとは言えない。
 
 34歳の野沢と33歳の梁が左右のサイドハーフに入った時と比べると、当たり前だがまだ粗さが目立つ。中央に侵入するタイミングも1、2テンポ遅れる場面もある。だが同時に、28歳の金久保と26歳の奥埜がピッチ上で放つ存在感に、伸びしろが感じてられるのも事実だ。
 
 この20代コンビがより貪欲にゴールを求め、先輩コンビのように相手に畏怖される存在となれたら……。今季はもちろん、来季以降もチームをもう一段、あるいはそれ以上のステップアップへと導くことになるだろう。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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