【総体】責任感と周りへの信頼感が魅力の前橋育英キャプテン徳永涼。“ピッチ上の監督”は誰もがついていきたくなるリーダーだ

2022年07月28日 安藤隆人

大きな声とボランチからの配球でチームをけん引

前橋育英のキャプテン徳永は炎天下のピッチで声を張り上げ続けた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[インターハイ準々決勝]前橋育英2-1矢板中央/7月28日(木)/鳴門・大塚スポーツパーク球技場

 インターハイ準々決勝・前橋育英(群馬)vs矢板中央(栃木)の一戦、炎天下のピッチで一番声を張り上げていたのが、前橋育英のキャプテンMF徳永涼(3年)だった。

「昨年、インターハイは2回戦で負けて、選手権もベスト8で負けた。本当に悔しくて、今年は絶対にこの成績は超えたかったという思いはありました。絶対にここで負けたくなかったんです」

 キャプテンであり、昨年からチーム伝統の14番を背負いし者としての自覚と責任は強烈なものがある。常に自分に厳しく、周りにもしっかりと要求しながら議論もすることができる。

「嫌われ役も買って出ることができる選手。みんな涼の言葉は聞きますよ、もう監督いらないくらいだと思います」と山田耕介監督も絶大な信頼を寄せる、まさに『ピッチ上の監督』だ。

 この試合、開始4分で最も警戒していたロングスローで失点を許すという最悪のスタートを切ったが、徳永は大きな声で「ここからだぞ!いつも通りにやれば相手は運動量が落ちてくるから狙うぞ!」と周りに声をかけた。
 
「ミーティングでも話し合っていたように、事前に分かっていた失点だからこそ、落ち込んでしまう危険性がありました。だからこそ僕が声を切らさずにやることで奮起させてもう一度自分たちのサッカーを取り戻そうと思った」

 声だけではない。ボランチの位置でボールを集約し、かつミスなく周りにパスを配ることで、前橋育英はすぐに主導権を奪い返し、持ち前のボールを握って多彩な攻撃を繰り出すサッカーを披露。矢板中央を左右に揺さぶって徐々に堅守に綻びを生み出していった。

 後半に入っても声とプレーの質は落ちるどころかますます精度を上げていった。0-1で迎えた後半2分、MF山田皓生(3年)が同点弾を挙げると、「一気に畳み掛けるぞ!」とこの勢いを手放さないようにチームを鼓舞。

 相手の縦に速い攻撃に対しても激しいプレスバックで守備を引き締めると、ボールを受ければサイドチェンジ、スルーパス、繋ぎのパスを駆使してリズムメーク。後半16分には再び山田皓が逆転ゴールを叩き込んだ。

 このゴールの後も「ここで気を抜いたら意味がないぞ」、「もっと戦え!球際だぞ」と声とプレーでチームを牽引し、最後まで前橋育英らしいボールを動かすサッカーを展開し、2−1の逆転勝利を収めた。
 

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