結果と育成を両立するR・ソシエダ監督。その存在の大きさに“次期監督候補”のレジェンドも今夏クラブを去る

2022年07月28日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

名将の仲間入りを果たしたいまも“サッカーおやじ”の雰囲気

育成にも定評があるレアル・ソシエダのアルグアシル監督。(C)Getty Images

 現在のレアル・ソシエダの顔と言えば、ミケル・オジャルサバルだ。クラブの生え抜きでもある背番号10は、スペイン代表の常連でもある。一方、知名度ではそのエースに大きく見劣りするが、イマノル・アルグアシル監督も、年々ステータスが上昇し、クラブの顔と言われるまでになっている。

 もともとはBチームからの内部昇格だった。初めてトップチームの監督に就任したのは2018年3月。ここでチームを見事に立て直したが、プロ予備軍を指導することに誇りを感じていたアルグアシルはシーズン終了後、ふたたびBチームの監督に返り咲いた。

 しかし翌シーズン、トップチームがまたしても不振に陥ると、18年12月にふたたびお鉢が回ってくる。そして以降の3年半では結果と育成を両立し、コパ・デル・レイ制覇(19-20シーズン)や3シーズン連続でのヨーロッパ・カップ戦出場権獲得を成し遂げつつ、MFマルティン・スビメンディ、CBロビン・ル・ノルマンらを育てている。

 自身も選手時代の大半をR・ソシエダのカンテラとトップチームで過ごしたアルグアシルだが、実はスペインでは、地元出身の選手や監督への視線は思いのほか厳しく、だからこそ現役時代のバックボーンがさしてない中で、長期政権を築いているアルグアシルの功績は特筆に値する。
 
 アルグアシルを語る時によく言われるのは、その普通さだ。名将の仲間入りを果たしたいまなお、「週末にスタジアムで試合を観戦する"サッカーおやじ"と変わりない雰囲気を醸し出している」と言われることが多く、その点では、同じR・ソシエダ出身でも、現役時代にビッグクラブを渡り歩いたシャビ・アロンソとは対照的だ。

 昨シーズンまでBチームで指揮を執ったそのシャビ・アロンソは、この夏にクラブを去った。19年夏にBチームの監督に招聘された時には、「将来的な内部昇格を見据えての人事」と言われたが、アルグアシルの存在が大きすぎて、他の道を探らざるを得なかったというのが退団の実情だ。

 アルグアシルが志向するのは、ボールを握る能動的なスタイルのサッカーだ。昨シーズン終盤、オジャルサバルの故障による戦線離脱後は、ダビド・シルバ中心の攻撃を構築し、戦術家としての手腕を改めて示した。

 ロベルト・オラベSDとの意思疎通もスムーズで、その中で今夏、モハメド=アリ・チョ、ブライス・メンデス、久保建英を獲得し、攻撃陣のテコ入れを図った。ラ・レアルの「もうひとりの顔」となった指揮官の新たなる挑戦が始まる。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部
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