【広島】柴﨑が待望の復帰!“寡黙な男”が秘めるライバル心と忠誠心

2015年09月13日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「コウセイはガクとはまた違ったタイプの選手で、相手にとって(対応は)難しい」(ミキッチ)

3節の浦和戦で痛めた左ハムストリングの故障が癒え、7試合ぶりに復帰。“バランサー”としての感覚は錆びついていない。 写真:田中研治

 広島に頼もしい男が帰ってきた。背番号30・柴﨑晃誠である。
 
 柴﨑は第2ステージ3節の浦和戦で左ハムストリングを負傷して戦線を離脱。全治6週間の予定が当初よりも回復が遅れ、山形戦で復帰するまで約2か月を要した。東アジアカップの日本代表候補に選ばれるなど、最も調子の良い時期にチームを離れることになったが、それでも焦りはなかったという。
 
「しっかり切り替えられた」(柴﨑)のは、優勝争いを牽引するチーム状態が心にゆとりをもたらせたことに加え、自身の代役としてシャドーの先発を務めた野津田岳人の存在があったからだと柴﨑は話す。
 
「ガク(野津田)は若くて実力もある。アイツの活躍はもちろん刺激になっていた」
 
 柴﨑はどちらかと言えば寡黙で、決して多くを語るタイプではないが、そこには後輩への信頼感が窺えた。だがそれと同時に、「自分も試合で結果を残して勝負をしていかないといけない」と続ける言葉からは、ライバル心と内に秘める闘争心も伝わってくる。それは、山形戦のプレーにも顕著に表われていたように思う。
 
 52分に野津田に代わってピッチに立つと、66分に右サイドを突破したミキッチの折り返しを浅野がスルーしてダイレクトシュート。90+2分には浅野拓磨とドウグラスがDFを引き付けて中央でフリーとなり、右足を振り抜いている。前者はバランスを崩してミートできず、後者もふかして枠を捉えられず多少のブランクは感じられたが、果敢にゴールを狙う姿は実にエネルギッシュなものだった。
 
「シュートは残念だった(苦笑)。約45分走れた一方で、1試合で考えればまだまだ。(試合勘なども)すぐに戻ると思うので、ああいった場面でシュートを枠に飛ばせるように、ゴール前の精度を上げていきたい」
 
 "柴﨑効果"はこれだけではない。最も大きいのは、バランサーが戻ったことで前線でよりボールが収まり、速攻と遅攻の使い分けがさらに効果的になった。「相手の嫌な位置にポジションを取って、自分のところでタメを作れればいいかな、と」と柴﨑がプレーの意図を説明すれば、ミキッチも復帰がもたらすチームへの好影響についてこう語る。
 
「コウセイ(柴﨑)が戻って来たのはチームにとってプラス。特に2対1のシチュエーションで、テンポがおかしくなってしまった時に、彼のようにボールを落ち着かせる選手が入ると、『行く時は行く、行かない時は行かない』のメリハリがつく。もちろん前半から相手を追い込んだガクの存在があってこそでもあるけど、コウセイはガクとはまた違ったタイプの選手で、相手にとって(対応は)難しいと思う」
 
 攻守におけるハードワーク、相手のギャップを突くポジショニング、そしてCFやウイングバックと繰り出すコンビネーションプレー。そこには派手さこそないが、すべてはチームの勝利に貢献するためであり、その存在はステージ首位と年間1位を狙ううえで大きな武器となるだろう。
 
「久々のピッチは楽しかった。あとは一試合一試合チームとして戦って、自分も結果を残してゲームに絡んでいきたい」
 
 そう宣言して、スタジアムを後にする柴﨑は実に頼もしかった。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
 
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