J1の2位クラブから“代表ゼロ”のサプライズ。鹿島勢はなぜ呼ばれなかったのか?

2022年07月17日 元川悦子

シンプルに数字が評価されたと見ていいはずだ

E-1に臨むメンバーに鹿島勢はゼロ。注目の鈴木も選外となった。(C)SOCCER DIGEST

 7月19日の香港戦から、いよいよ幕を開ける日本代表のE-1選手権。17日から千葉県内で強化合宿をスタートさせる。が、残念ながら初戦の地・鹿嶋を本拠地とし、J1で2位につける鹿島アントラーズ勢はこの時点でゼロ。やや偏りのあるチーム編成になってしまった。

「鹿島も非常にインテンシティの高い、攻守ともにアグレッシブな良いサッカーをしています。鹿島の選手たちも、候補として見ている段階では数名リストアップさせてもらいましたが、選考のタイミングで移籍であったりという理由等々ありまして、選べなかったところはあります」

 森保一監督は13日のメンバー発表会見でこう説明したが、この発言から見えてくるのは、今夏にベルギーのサークル・ブルージュに移籍した上田綺世をどうしても呼びたかった、という切実な思いだろう。

 発表時点でJ1得点ランキングトップの10ゴールを挙げていた上田は、6月4連戦のメンバーにも入っていたし、4か月後に迫ったカタール・ワールドカップ(W杯)メンバーの有力候補とも位置づけられている。国内組のみのE-1では当然のごとく絶対的エースに君臨するはずだった。そのキーマンがこのタイミングで海外移籍に踏み切り、招集不可能になったのは指揮官にとって期待外れだったかもしれない。

 そんな事情もあり、上田不在のFW陣をどうするのかというのは、今回の注目点の1つだった。成長著しい22歳の町野修斗(湘南)が7月2日の名古屋戦で負傷したこともあって、人材難が叫ばれていた。ゆえに「今度こそ鈴木優磨を呼ぶべき」という意見も日に日に高まっていた。にもかかわらず、またしても彼が外れたことで「鹿島ゼロ」がより際立つ格好になってしまった。それは紛れもない事実だろう。

 結局、森保監督が選んだのは、武藤嘉紀(神戸)、西村拓真(横浜)、町野、細谷真大(柏)の4人。西村と町野はメンバー発表時点でともにJ1で8点。7点の鈴木を上回っていて、シンプルに数字が評価されたと見ていいはずだ。

 細谷は2024年パリ五輪世代のエースで、6月のU-23アジアカップでもUAE戦や韓国戦で得点と、重要局面での勝負強さが光った。U-21代表の大岩剛監督も「A代表経由パリ行き」を強く求めていて、それになり得る細谷を押したかったはず。そのあたりを森保監督も汲み取って抜擢したに違いない。
 
 となると、鈴木のライバルは武藤だったはず。武藤は発表時点で5点と鈴木を下回っているが、2018年ロシアW杯のメンバーであり、ドイツ・イングランド・スペインと欧州5大リーグを渡り歩いてきた実績もある。

 加えて言うと、武藤は2019年アジアカップや今年1月の国内組合宿にも招集されていて、森保監督との信頼関係もできている。FW陣に1人はそういう存在がいてほしいと指揮官も感じていたはず。ここ最近、復調傾向という追い風もあって、やはり武藤という選択肢になったのだろう。

 ところが、直近の16日の鹿島対神戸で武藤が右足首を痛めて途中交代。E-1参戦が危うくなった。一方の鈴木は最後の最後までプレー。0-1で迎えた87分の和泉竜司の同点弾をアシストするという大仕事をやってのけた。エヴェラウドと2トップを組んだ鈴木は左右に流れてプレーすることが多く、森保監督が求める1トップ像とはやや異なる印象もあったが、もしかすると追加招集がないとは言えない。そこは様子を見るしかないだろう。
 

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