元なでしこ永里優季が海外に出て痛感したこと「プロ意識の違い。仲間は仲良しの友人であればいいわけじゃない」【第2回】

2022年07月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

「ワンプレーで自分の立場が変わってしまうという危機感」

アメリカで活動している永里。(C)Getty Images

 2011年、日本の女子サッカーは世界の頂点に立った。ドイツで開催されたワールドカップ(W杯)で、佐々木則夫監督が率いる、なでしこジャパンは決勝で強敵アメリカを破り、澤穂希が高々と黄金のトロフィーを掲げた。東日本大震災に見舞われていた日本の国民にとって、希望の象徴となったシーンで、鮮明に覚えているファンも少なくないだろう。しかしその後、11年経った今まで、日本女子は世界のトップに立てていない。

 WEリーグが開幕し、女子サッカーを取り巻く環境は改善されている。それなのに、日本の女子サッカーに漂う"手詰まり感"の正体は何なのか。

 そこで、今はアメリカのNWSLシカゴ・レッドスターズで活動し、かつてはなでしこジャパンとして活躍した永里優季に、今の代表チームについて話を聞いた。2006年のアジアカップでは得点王となり、ドイツW杯を制したチームのひとりで、選手としてドイツやイングランド、オーストラリアでもプレーした経験を持つ永里は、現在のなでしこジャパンや日本の女子サッカーに対して何を思うのか。【第2回/全3回】
 
 例えば、私が今、なでしこにいたら? そうですね……もしかしたら、試合が絡むときは、その場をちょっとピリッとした空気にしてしまうかもしれません(笑)。

 もちろん、コミュニケーションは取りますが、仲間というのは、仲良しな友人であればいいわけじゃない。時には耳の痛いことも言わないといけない。そういう時に、ベテランの存在というのは、必要とされる場面があるのかもしれないですね。

 外国に来て感じたことのひとつに、日本人は、プライベートな部分も仕事の場に持ち込んでしまうタイプの人が多いんじゃないかな、というのがあります。

 考えてみると、私がプロとしての見られ方を意識し始めたのは、海外に出てからです。ドイツ、アメリカと渡ってきましたが、ここではごく自然にお金をもらって働いているアスリートとして見られる。そういう立場だと、発言に求められる責任の大きさも、日本とは全然違ってくるんです。極論を言えば、サッカーが上手い下手は関係ない。自分の仕事に対する誇りと感謝をしっかり口にすることができるかが、プロ選手としての振る舞いなんですよね。

 以前、私のYoutubeチャンネルで、プロアイスホッケー選手の三浦優希さんにインタビューしたとき、「Be Heavy on the Pack(プレーを重くする)」という言葉を教えてもらいました。渡米して、指導者の方にその言葉を教えてもらったそうです。プロの選手は、ワンプレー、ワンプレーで自分の立場が変わってしまうという危機感を持たなければいけない。おかげでプレーへの意識が変わったと言っていました。これはサッカーにも通じる言葉だなと思います。

 話をなでしこに戻しますが、技術的な面では、今の選手たちのレベルは上がっています。私より確実に上手。私は、ドイツ・ワールドカップのなでしこジャパンの一員とは言われますけど、自分は何もできなかった。北京五輪でも実力不足に直面して(結果は4位)、海外に行かなきゃいけないって感じて―――その繰り返しですから。
 

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