「ピアノを運ぶ」タイプが多い札幌。いかにゴール前で美しい旋律を奏でられるか。パワーバランスの調整が肝だ

2022年07月11日 斉藤宏則

札幌は決して力のないチームではない

慢性的な決定力不足に悩む札幌。通算159点と現役J1最多得点者の興梠にかかる期待は大きい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第21節]札幌0-0鹿島/7月10日/札幌ドーム

 札幌は5月末から苦戦が続いている。15節から3連敗を喫し、その間にルヴァンカップ、天皇杯も敗退。今節の鹿島戦も2連敗という状態で挑んでの0-0のドロー。総失点36、得失点差マイナス17はリーグワーストであり、21節を終えて14位と残留争いも近くに迫りつつある。

 失点数が現在の成績に大きな影響を与えていることは間違いないが、守備に関しては別の機会に譲るとして、攻撃的なスタイルを標榜するチームなだけに今回は攻撃について見てみたい。

 ミシャことペトロヴィッチ監督をはじめ、ほとんどの選手が「チャンスは作れているので、そこで決め切れていれば、こうした結果にはなっていなかったはず」と、今季の多くの試合について見ている。鹿島戦後にもミシャは「作ったチャンスを決め切れていない。それが今の状況であり、順位を反映している」と語った。

 失点もさることながら、いわゆる"決定力不足"が苦戦の大きな要因だということなのだろう。さらに記せば、これらのコメントはともに昨シーズンからすでに何度も耳にしてきたもの。決定力不足は慢性的だ。

 鹿島戦を見ても感じたが、札幌は決して力のないチームではない。ボールを動かしながら相手の隙を探し、両サイドで選手がローテーションしながら相手守備を揺さぶる。ボールを奪われてもマンツーマンディフェンスで勢いよく即時奪回を狙う。良い意味で嫌らしいチームだ。ポジションチェンジも目まぐるしく、よく鍛えられていると思う。
[J1第21節]札幌0-0鹿島/7月10日/札幌ドーム

 札幌は5月末から苦戦が続いている。15節から3連敗を喫し、その間にルヴァンカップ、天皇杯も敗退。今節の鹿島戦も2連敗という状態で挑んでの0-0のドロー。総失点36、得失点差マイナス17はリーグワーストであり、21節を終えて14位と残留争いも近くに迫りつつある。

 失点数が現在の成績に大きな影響を与えていることは間違いないが、守備に関しては別の機会に譲るとして、攻撃的なスタイルを標榜するチームなだけに今回は攻撃について見てみたい。

 ミシャことペトロヴィッチ監督をはじめ、ほとんどの選手が「チャンスは作れているので、そこで決め切れていれば、こうした結果にはなっていなかったはず」と、今季の多くの試合について見ている。鹿島戦後にもミシャは「作ったチャンスを決め切れていない。それが今の状況であり、順位を反映している」と語った。

 失点もさることながら、いわゆる"決定力不足"が苦戦の大きな要因だということなのだろう。さらに記せば、これらのコメントはともに昨シーズンからすでに何度も耳にしてきたもの。決定力不足は慢性的だ。

 鹿島戦を見ても感じたが、札幌は決して力のないチームではない。ボールを動かしながら相手の隙を探し、両サイドで選手がローテーションしながら相手守備を揺さぶる。ボールを奪われてもマンツーマンディフェンスで勢いよく即時奪回を狙う。良い意味で嫌らしいチームだ。ポジションチェンジも目まぐるしく、よく鍛えられていると思う。
 
 そんな札幌の現状を見るうえで、故イビチャ・オシムさんが口にしていた「ピアノを弾く人もいれば、ピアノを運ぶ人もいる」という言葉を思い出したい。ここで言う「ピアノを運ぶ」は「水を運ぶ」と同様に、「献身的な仕事をする」といった類の意味合いだろう。

 現在の札幌は「ピアノを運ぶ」タイプの選手が多い。たくさん走り、身体を張ってボールを奪い、懸命に味方のフォローに走る。相手ボールになれば、一連の作業を直ちにイチから再開する。

 駒井善成や高嶺朋樹、荒野拓馬、菅大輝など、そうしたハードワークでチームを支えるタイプの選手が、特にMF以前には多く並ぶ。チームのために汗をかける好選手がとても多い。結果、ボールを奪い、運び、好機を作り出す回数は多いものの、シュートに持ち込むまでの頑張りでパワーを消耗してしまい、最後のところで決め切れないような場面も多い。
 

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