後ろに目がついてる!? U-23アジア杯でブレイクしたパリ五輪のエース候補・鈴木唯人の空間認知力

2022年06月25日 前島芳雄

中盤で前を向く時にターンの方向を間違えることがほとんどない

高卒でプロ3年目の鈴木。開幕から主力のひとりとして奮闘し、ここまで3得点。さらなる活躍に期待がかかる。(C)SOCCER DIGEST

 ウズベキスタンで開催されたU-23アジアカップで、3位という結果を手土産に帰ってきたU-21日本代表。その立役者の1人となったのが、清水エスパルスの鈴木唯人、20歳だ。とくに、3-0で勝利した準々決勝の韓国戦では2得点など全ゴールに絡む活躍は、国内外に大きなインパクトを残した。

 2年後のパリ五輪を目ざす若き代表チームで輝きを放った鈴木のプレーについて、一から語る必要はないだろうが、今回は清水の練習取材の中で聞いた彼自身のプレー解説(?)をひとつ紹介したい。

 鈴木の大きな特長のひとつに、中盤の狭いスペースでパスを受けて自力で前を向き、ボールを運んでチャンスにつなげるプレーがある。その時に感心するのは、ターンの方向を間違えることがほとんどないのだ。相手が左後方から来れば、すっと右にターンし、右から来れば迷わず左。「後ろに目がついてるの!?」と言いたくなるプレーを当たり前のように見せてくれる。

 ドリブルしていて後ろから相手選手が追いかけてきた際にも、すっとコースを変えて相手の前に入るので、相手はボールを奪いにいくことができない。後ろに目がついているのかと感じさせる選手は筆者も何人か見てきたが、鈴木はその中でも際立っているように感じる。

 そこで、どうやって相手の位置を感じ取っているのか、率直に聞いてみたことがある。

「あれは、とくに(後ろを)見てるわけでもないし、相手がこっちにいるからこっちに行こうとか考えてるわけでもなくて、感覚というか……高校2年生の頃から相手の間で受けるっていうのを監督にずっと叩き込まれてきたので、何も考えずにやってる感じです。

 あそこで前を向いて、局面を打開するとか、チャンスメイクまで持っていくというのは、自分の武器でもあると思うし、ちょっと強引にでも前を向いて仕掛けていかないと展開は変わらないので、安全をとってバックパスとかじゃなく、取られてもいいから強引に行くというのは心がけてます」

 ある意味、予想通りというか、彼らしい答えだった。「感覚」という単語は、鈴木のような選手には便利な言葉だが、理屈っぽさが身上の筆者としては、もう少し具体的な話が欲しくて食い下がってみた。

「ポジショニングで、ここには相手が来ないだろうというところに立とうとはしてますよ。なんとなくフォーメーションで(相手が)いる位置が分かるじゃないですか。だから、その感覚だけ考えながら、試合中ずっとフラフラしてます(笑)。その中で、ここが空いてると思ってフェイクを入れてから入るぐらいです」
 
 動き出す前の時点で相手選手の配置はきっちり把握しつつ、最後のところは文字通り"感覚"で対処しているようだ。ドリブル中に背後から来る相手の察知についても聞いてみた。

「相手がどのぐらいの距離なのかによって、ボールを守るのか、コース取りで身体を入れるのかというところですが、それも感覚でやってますね。足音で分かるのか?……う~ん……気配ぐらいですかね」

 気配なのか音なのか、本人も考えたことはないようだが、凡人には分からない領域であることは間違いない。
 

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