広島の大きな伸びしろを確信したスキッベ監督の言葉。札幌戦で何度も決定機を外したJ・サントスへのコメントには感服した

2022年06月11日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

試合を的確に分析できないと話せない言葉だった

広島を率いるスキッベ監督。巧みな手腕で選手を成長させている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「今日は100パーセントに近い確率で奪えるはずのゴールを何度も逃してしまいました。そこは少し残念に思います」

 ルヴァンカップ・プレーオフステージ第2戦の札幌戦で1-1と引き分け、広島のミヒャエル・スキッベ監督はそう話した。敵地での第1戦を3-0で制し、ドローでもプライムステージ準々決勝進出を決めたとはいえ、やはりホームで勝利を挙げられなかったのは悔いが残る。

 確かに相当数のチャンスを逃した。特に悪目立ちしていたのがFWジュニオール・サントスで、19分の右足シュートを防がれ、40分の相手GKとの1対1も外し、67分にはゴール前で左足を振り抜いたが、これも相手GKにセーブされている。

 何度も決定機を外し、無得点のまま75分に途中交代したJ・サントスをスキッベ監督はどう評価したか。試合後に会見で聞いた。

「確かに彼はいくつか決定機を外していますけど、逆に(87分に)満田が一発で(同点ゴールを)決めたように、『ああいう風にやるんだよ』という話をしようと思っています(笑)。ただ、あそこまでチャンスを作れた、シュートまで行けたことは評価できるポイントです。そこは評価しながら、次の試合では同じ数のチャンスがなかったとしても、2点取れれば、それでいい」

 チャンスを掴むまでのプロセスを褒めたコメントには感服した。試合を的確に分析できないと話せない言葉だからである。会見でユーモアを交えたり、交代したJ・サントスを慰めるように肩を叩いていた姿から察するに、スキッベ監督は相当な人格者なのだろう。しかも、どんな試合でも良いプレーを炙り出してくれるのだから、こういう指導者には選手も付いていきたくなるはずだ。
 
 実際、J・サントスはスキッベ監督の下でかなり成長している。加入当初の2021年はひとまずボールを持ってからプレーのビジョンを描いていたように映ったが、現指揮官の下で試合を重ねるたびに球離れが良くなり、オフ・ザ・ボールの動きも上手くなっている。本人に細かく指導しているのは想像に難くない。おそらく前述した3つの絶好機は、昨季までの彼ならそもそもチャンスを掴めていなかった。

 スキッベ監督の下で成長しているのはJ・サントスだけではなく、森島司や藤井智也、野津田岳人や満田誠……など書ききれないほどかなり多い。この監督の指導なら個々が力をつけてゆき、チームとしてはさらに強くなっていくはずだ。スキッベ監督のJ・サントスへの言葉を聞いて、今のサンフレッチェ広島には大きな伸びしろがあると確信した。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)

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