終了間際のビッグセーブでチームを救った鈴木彩艶。トライ&エラーを繰り返し、辿り着いた新たなスタイル【U-21代表】

2022年06月08日 松尾祐希

少し前の位置で構えて右手一本で阻止

昨夏の東京五輪に飛び級で選出されるなど、将来を嘱望される鈴木。U-23アジア杯でも充実のプレーを見せている。(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)

 試合終了から2時間後。ドーピング検査の対象になった影響からか、最後にミックスゾーンへ現われたGK鈴木彩艶(浦和)の足取りは重かった。だが、表情は自信に満ち溢れており、充実感が伝わってくる。試行錯誤していた春先のような不安げな様子はもう見られなかった。

 ウズベキスタンで開催されているU-23アジアカップ。グループステージ第2節で、U-21日本代表はU-23サウジアラビア代表と対戦し、0−0で引き分けた。

 相手は2歳年上。しかも、スタメンの大半がA代表の出場歴を持った選手で固められている。2018年度のアジア年間最優秀ユース選手賞を受賞した左サイドハーフの10番トゥルキなど、攻撃陣の破壊力は今大会随一と言ってもいい。

 3月下旬のドバイカップ決勝で対戦した時も強さが際立っていたが、今回のチームのほうが数段に上――そんな見立てもあるなかで、日本は主導権を握り、押し気味に試合を進めていく。そして、日本の守護神に見せ場が訪れたのは、試合の終盤だった。

 78分にFW藤尾翔太(徳島)が競り合いの際に自身の手が相手の顔に当たってしまい、VARの介入を経て一発退場となる。残りはアディショナルタイムを含めて15分ほど。決勝トーナメント進出のためには最低でも勝点1を掴みたい一戦で、最終盤は相手に決定機を作られるシーンが明らかに増えた。

 それでも鈴木は冷静に対応し、難しいシュートも完璧にブロックする。「ひとり少なくなった状況でも落ち着いてプレーできた」と振り返ったが、守護神の好セーブがなければ、貴重な勝点1は得られなかったかもしれない。

 思い返せば、春先は苦悩していた。今まで作り上げてきたベースを大事にしつつ、ミドルシュートやクロス対応の際のポジショニングについて見直しを図っていたのだが、思うようにいかない。3月に行なわれたU-21日本代表の千葉合宿で話を聞いた際も、新たな取り組みが形になっていない様子が窺えた。

 だが、今季から浦和のGKコーチに就任したジョアン・ミレ氏の教えを徐々に理解し、少しずつ新たな形を構築していく。それが成果として感じられたのが、4月中旬からタイで集中開催されたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージだった。

「チームであまり試合に出られていなかったので、どうなのかなと思った部分があった。だけど、ACLで試合に出たときに成長している実感があったんです。そこから代表の合宿に来た時も去年と違う感覚があり、整理されてきたなという感覚がありました」

 ACLには4試合に出場し、実戦の中で経験を蓄積。その結果、今まで取り組んできたプレーの答え合わせをする場となり、確かな手応えを掴んだ。
 
 そうした取り組みの成果はサウジアラビア戦でも示された。とりわけ、この試合で素晴らしかったのはミドルシュートへの反応だ。

「今まで低めのポジションを取っていたけど、高めの位置を取って対応する。そこは変えた部分ですね」

 89分にトゥルキに打たれた強烈なミドルシュートに対し、ゴールラインより少し前の位置で構えて右手一本で阻止。新たなスタイルでチームを救った。「後半の終了間際、相手の10番に打たれたシュートは絶対入ったなと思った。そこを止められる素晴らしいGK」とDF半田陸(山形)も賛辞を惜しまなかった。

 トライ&エラーを繰り返しながら、辿り着いた新たなスタイル。今大会で自信を深めていけば、成長速度はさらに加速する。昨夏の東京五輪に飛び級で選出されるなど、将来を嘱望されてきた守護神はもう迷わない。前だけを見て進んでいく。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

[試合情報]
AFC U23アジアカップ2022
グループステージ第3戦
日本代表 vs タジキスタン代表
2022年6月9日(木)22時キックオフ
DAZN独占配信

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