大迫不在は「チーム力を上げるチャンス」。浅野、古橋、前田、上田。“最後のアピールの場”で躍り出るのは誰だ!?

2022年06月01日 元川悦子

4人は前線でタメを作るタイプではない

大迫が不在の今シリーズで、新エースとして名乗りを上げるのは誰か(左上から時計回りで浅野、古橋、前田、上田)。(C)SOCCER DIGEST

 4連戦の6月シリーズに向け、5月30日に日本代表の活動がスタート。その翌日、チームは2日のパラグアイ戦の地・札幌へ移動し、夕方にトレーニングを行なった。猛暑の千葉とは打って変わって冷たい雨の中だったが、前日は別調整だった上田綺世(鹿島)も合流。左足首の状態が懸念されていた久保建英(マジョルカ)も無事に戻ってきた。

 一方で、同日夕方に現地入りした南野拓実(リバプール)、柴崎岳(レガネス)、菅原由勢(AZ)の3人と、別メニューの続く守田英正(サンタ・クララ)、冨安健洋(アーセナル)は全体練習に不参加。彼らはパラグアイ戦回避が濃厚と見られる。

 こうした陣容のなか、やはり注目されるのは、大迫勇也(神戸)不在のFW陣だ。今回はコンディション面を理由に選外となっている。

「大迫がいることによって周りがイキイキしてくる。それは僕も一緒に戦って感じているし、彼の存在は大きいなと思う」と長友佑都(FC東京)はしみじみと語っていた。ただ、森保一監督がチーム発足時から大黒柱と位置づけてきた男のカタール・ワールドカップ(W杯)出場は確約されているわけではない。今、違った形を模索することは喫緊の課題と言っていい。

「大迫抜きで戦った時に、チームの伸びしろを増やし、チーム力を上げていくチャンス。どの選手がアピールしてくれるかを楽しみにしている」と指揮官も前向きにコメントした。果たして誰が一歩抜け出すか。"脱・大迫"の道筋を見出せるのか。それが今シリーズの大きな見どころになるのは、間違いないだろう。

 そこで、今回招集されているCF候補の浅野拓磨(ボーフム)、古橋亨梧と前田大然(ともにセルティック)、上田を改めて見てみると、ご存じの通り、4人は前線でタメを作るタイプではない。大迫のように敵を背負って時間を作る仕事を期待しようにも、パラグアイやブラジルといった強豪相手にはハードルが高そうだ。

 となると、ターゲットマンに頼る戦いを志向するのではなく、縦への推進力を全面に押し出すスタイルにシフトしたほうが賢明。それは長友も強調している点だ。

「ワールドカップで対戦するスペインやドイツには、ボールを支配される時間帯が多くなる。今のFW陣は速くて生かされるタイプの選手が多いから、彼らをうまく使いながら、どこでカウンターのスイッチを入れるのかを考えていく必要がある」と35歳のベテランは言う。
 
 特に浅野、古橋、前田のスピード系3人には前からの守備、裏への抜け出し、フィニッシュの精度がより強く求められるだろう。そこで重要なのが、決めきる力だ。

「僕自身、スピードはブンデスリーガでもあまり負けることはないが、勝ったところでシュートまで行けるかが問題。相手は最後の最後のところで戦ってくるので、抜けたところでゴールまで結びつけるプレーが難しい」と、ドイツで4年戦った浅野が神妙な面持ちで語る。仮に高い位置でボールを奪ってショートカウンターを発動できたとしても、強豪相手に得点を奪い切るのはそうたやすいことではない。

 今季スコットランド1部で12点を挙げた古橋、6点を奪った前田にしても、相手DF陣のレベルが上がる分、重圧もかかるだろうし、仕留めるのは難しくなる。今回のテストマッチで落ち着きを持って得点できるか否か。まずはそこを見極めることが肝要だろう。
 

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