バルサ育ちの俊英SB髙橋センダゴルタ仁胡とは何者か。指揮官も唸る特大のポテンシャル【U-19代表】

2022年05月30日 松尾祐希

“止める”、“蹴る”は正確で、ボールタッチは一切乱れず

トレーニングでは随所に能力の高さを見せつける髙橋。代表初選出は「本当にエキサイティング」と意気軒高だ。写真:松尾祐希

 スペインで生まれ育ち、バルセロナの育成組織に籍を置き、同国の世代別代表歴を持つ左SBが、日の丸を背負い、モーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)でどんなプレーを見せるのか。U-19日本代表のメンバーが発表された時から、誰もが気になる存在として注目していたのは間違いない。

 噂の逸材の実力とは――。5月31日に行なわれるアルジェリアとの大会初戦を前に、バルサのフベニールB(U-18チーム)所属のDF髙橋センダゴルタ仁胡が飛躍の予感を漂わせている。

 今回が初となる日本代表での活動。周りに知っている選手やスタッフもおらず、見知らぬ場所でのプレーに怖気づく選手は珍しくない。だが、アルゼンチン人の父と日本人の母を持つ髙橋は、異国の地で養ってきたオープンなマインドと、母から学んだ関西弁を駆使して仲間の輪に入り、27日の合宿初日から正確無比なプレーで大器の片鱗をのぞかせる。そのプレーを見た冨樫剛一監督も唸り、思わず報道陣に「ウォーミングアップ中の対面パスを見た?」と訪ねてくるほどだった。

 28日のトレーニングでも随所に能力の高さを披露し、2人組の対面パスではノーミス。ハイテンポの蹴り合いになっても"止める"、"蹴る"を正確に行ない、ボールタッチは一切乱れない。しかし、そのプレーは序の口に過ぎなかった。

「ボールを持っている時にやりやすさを感じるタイプ」と本人が認める通り、対人トレーニングやゲーム形式では相手に寄せられても、ミスなくボールをコントロール。次のプレーに移行しやすいようにボールを運ぶ。パスを受ける際の振る舞いも素晴らしく、常に仲間の位置を把握し、相手が飛び込めないような位置に陣取る。

 パスをもらえば、正確に繋ぐだけではなく、隙あらば前にボールを運ぶ。上半身の力が強いため、相手に囲まれて身体をぶつけられても倒れない。本人はカンテラの先輩、ジョルディ・アルバを参考にしていると話すが、ボランチでもプレーできそうな資質すら感じさせた。初めて一緒にプレーする佐野航大(岡山)は、髙橋のクオリティに舌を巻いていた。

「プレーを見て思ったのは、常に前を見ながらサッカーをしている。ボールの置き所も良くて、パッと前を向ける。そういうところも、すごく勉強になる。ボランチであのプレーができたら、相手もやばいと思うはず。そういうのは見習うところ。本当にボールの持ち方が抜群にうまい」
 
 サッカーIQや技術の高さが目に止まる一方で、単純に"うまい"だけの選手ではない。とりわけ、際立っていたのが29日に実施された紅白戦の終盤に見せたプレーだ。左SBの位置から攻撃に加わったのだが、自身のミスからアタッキングサードでボールを失ってしまう。だが、そこから一気に攻守を切り替え、ボールを拾った相手に向かってダッシュして奪い返したのだ。

 即時奪回のプレーに対し、佐野も「奪い返したプレーも凄かった。あの強度でやる同い年もあまりいないと思う。あの場面でもニコだけがプレスバックに行っていた。そこは本当に凄い」と驚きを隠せなかった。

 スペインで研鑽を積んできた実力は本物だ。「日本代表に招集される連絡が来た時は、嬉しくて、まずはお母さんに電話をして喜んでもらえた。本当にエキサイティングだったので、最初の試合は本当に楽しみ」とは髙橋の言葉。だが、代表デビューを楽しみにしているのは本人だけではない。スタッフやファンも大きな期待を寄せているはず。どんなプレーを見せるのか。異質な才能を持つ俊英の代表デビュー戦が今から待ち遠しい。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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