現地紙コラムニストが綴る【武藤嘉紀のブンデス挑戦記】「武藤は常に存在感があり、敏捷で柔軟なパスの受け手だった」

2015年08月26日 ラインハルト・レーベルク

カウンターの急先鋒に。冷静になればゴールもおのずと。

決定機を決めきれなかったのは反省材料だが、攻守に貢献度が高かったとレーベルク記者はボルシアMG戦の武藤を高評価。 (C) Getty Images

 新天地マインツでの1年目、はたして武藤嘉紀はどんなパフォーマンスを見せるのか。現地紙でコラムニストを務めるラインハルト・レーベルク記者の筆で、武藤の「挑戦記」をお届けする。
 
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 ブンデスリーガ2節のボルシア・メンヘングラッドバッハ戦で、武藤嘉紀は初のスタメン出場を果たした。
 
 アウェーに乗り込んだマインツは、チャンピオンズ・リーグ出場組のメンヘングラッドバッハに2-1で勝利。昇格組のインゴルシュタットにホームで敗れた開幕戦の失態をいわば挽回する快勝で、チームも、そして武藤も、まずはホッとひと息といったところだろう。
 
 武藤には充足感さえあるはずだ。先発フル出場で、フィジカル的にも、技術的にも、戦術的にも、ブンデスリーガの要求に十分応えられるということを証明したからだ。
 
 格上のメンヘングラッドバッハを相手に、マインツは持ち味を発揮した。自陣に堅固な守備ブロックを構築し、カウンターアタックでゴールを陥れる堅守速攻を機能させたのだ。中盤センターのユリアン・バウムガルトリンガーとファビアン・フライがスイッチを入れるスピーディーなカウンターの急先鋒となったのが、1トップに入った武藤だった。
 
 武藤はかなり優れたパフォーマンスを見せたと言っていい。豊富な運動量とチームへの献身は、レスターに去った前任者、岡崎慎司を思い起こさせた。
 
 シュートの場面でもう少し冷静になれば、ゴールという結果もおのずとついてくるだろう。ゴールさえあれば、メンヘングラッドバッハ戦でのプレーは文句なしだった。クリスティアン・クレメンスが奪った79分の決勝点にも、正確な落としで絡んでいた。
 
 画竜点睛を欠いたのは、その後の二度のチャンスをフイにしてしまったからだ。決めなければならないシュートを2本とも外したのだ。
 
 87分。バウムガルトリンガーのパスを受けた武藤は、正面右から低く抑えたシュートを放ったが、ほぼフリーで打った右足の一撃は左ポストをわずかに外れた。
 
 89分。カウンターからDFラインの背後に抜け、最後は追いすがる相手DFに寄せられながらもシュート。しかし、これはゴール上に外してしまった。
 
 アドレナリンが出過ぎて力んだのかもしれない。ただ、岡崎なら冷静に決めていたはずだ。
 
 もっとも、武藤は伸び盛りの23歳だ。ゴールのために必要なテクニックとメンタリティはこれから身に付けていくだろう。

次ページマッリとのコンビネーションの発展に期待。

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