連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】柏完敗……日本サッカーはもっと殴り合うべきだ

2015年08月26日 熊崎敬

広州の勢いに押され、精神的にも受け身に。

力任せに前に出る広州の圧力に、柏はいわば腰が引けてしまい、つなぐサッカーができなかった。 (C) SOCCER DIGEST

 柏がまたしても広州恒大に敗れた。
 
 過去1分け3敗、2得点・11失点と圧倒されている天敵に、今回も1-3。終盤は見せ場を作り、89分に工藤が1点を返したものの焼け石に水に近い。
 
 柏は前半、シュートゼロに終わった。
 広州の圧力に腰が引けてしまい、Jリーグで見せるつなぎのサッカーができなかった。
 
 近場につなぐとカットされる恐れがあるため、CBコンビの鈴木、エドゥアルドは、ボールを持っても前線にロングボールを蹴るしかなかった。
 
 だが、サポートがない中でロングボールを収め、前を向き、敵を外すのは難しい。頼みのクリスティアーノも広州の激しいマークに沈黙。攻めの形が作れず、それどころかすぐに攻め返されるという悪循環に陥った。
 
 ゲームは空中を激しくボールが飛び交う展開が多くなった。だが、こういうリズムに柏、いや、日本人は慣れていない。力任せに前に出てくる広州の勢いに押され、精神的にも受け身に回ることになった。
 
 柏に限らず、Jリーグ勢が広州と対戦したら、どこも同じような展開を強いられるだろう。というのも、「粗いボール」でプレーする術を知らないからだ。
 
 日本人にとってのサッカーは、きれいにパスをつなぐもの。日本人同士が戦うJリーグでは、そういう文脈になるが、対外試合になると通用しない。彼らは腕力の強さを誇示するような、激しいプレーを仕掛けてくるからだ。
 
 敵が殴り合いを仕掛けてきたとき、受け手にはふたつの選択肢がある。正々堂々と殴り合うか、抜群のテクニックで翻弄するか、そのどちらかだ。
 
 殴り合いができない日本はテクニックで戦おうとするが技量が足りないため、結局、敵のペースに巻き込まれてしまう。こういうときに持ち出されるのが、ワールドカップでもよく耳にした「自分たちのプレーができなかった」という言葉である。
 
 結局、日本のつなぐサッカーは中途半端で、敵を圧倒するほどのレベルには達していないのだ。
「自分たちのサッカー」を標榜するなら、完璧な水準まで突きつめる覚悟を持たなければならない。
 
 だがサッカーというスポーツの本質を考えると、それは現実的ではないだろう。サッカーは激しいのが当たり前で、その中で生きないテクニックは本物ではないのだ。
 
取材・文:熊崎敬
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