松木玖生の名相棒がついにプロ初先発。「自信になった」水戸戦は「すごく良かった」と称賛されるほどの出来だった【町田】

2022年05月10日 郡司 聡

「今まで自分が培ってきたものを出そうとしていました」

水戸戦でプロ初先発を飾った町田の宇野。上々のパフォーマンスを披露した。©J.LEAGUE

 ついに手にしたプロ初先発の舞台――。"高校3冠"を達成した青森山田高の3年時、松木玖生(FC東京)と名ボランチコンビを組んでいた町田の宇野禅斗が、J2第15節の水戸戦で本格的なプロとしての第一歩を刻んだ。

 試合2日前の紅白戦。宇野は不動のダブルボランチの一角である髙江麗央に代わって、佐野海舟の相棒に配置された。それまでの紅白戦で何度か主力組に組み込まれることはあっても、実際にフタを開けてみれば、佐野の相棒は不動の髙江でなかなかその牙城を崩せなかった。待望のプロ初先発へ、"肩透かし"を食らう厳しい現実。それでも、水戸戦に向けた準備期間はいつもと様子が違った。

「準備期間の段階から先発で行くようなことは監督からも言われていました。ここ数試合はメンバーにも定着していましたし、開幕先発に入るぐらいの気持ちでプロに入ったので、そういう意味ではプロの厳しさを感じていました。そのなかでも『いつかは先発で出るぞ!』という闘志は燃やしていました。やっとチャンスを掴んだ嬉しい気持ちもあったなかで、ここで結果を出そうという強い気持ちで試合に臨みました」
 
 佐野との役割分担はボール保持の際に縦関係となり、宇野のほうがより前線と絡むポジションを取ること。また時には最終ラインにポジションを落とし、チームがビルドアップから効果的な前進を図るため、3枚回しの一角を担う働きにも積極的にトライした。

「状況を見ながらですが、今まで自分が培ってきたものを出そうとしていましたし、戦況を把握する力は自分のストロングポイントだとも思っています。戦況に応じて海舟くんとの役割を変えながら、臨機応変にやっていました」

 そうしたオフェンシブな姿勢は、シュート2本を撃つことにもつながった。特に38分のシュートは相手DFにブロックされたが、ディフレクションを誘発し、相手GK山口瑠伊のセービングをより難しい状況に追い込んだ。もちろん、決められれば最高の展開だったが、「攻撃参加の意識づけ」が決定機を生んだことは、間違いない。
 
 一方の守備面では自慢のボール奪取能力やセカンドボール回収力を発揮。佐野とともに中盤の強度を高める働きで決して水戸を自由にさせなかった。

 0−0で迎えた59分、宇野は髙江との交代でプロ初先発の舞台を終えた。ベンチへと引き上げる際、ランコ・ポポヴィッチ監督に熱い抱擁で労をねぎらわれ、試合後のロッカールームではチームメートから「すごく良かった」と声を掛けられたという。それまで途中出場で起用された際の主なポジションはトップ下。また日々の練習ではチーム事情から右SBを務めることもあった。それでも宇野は「本職だと思っている」ボランチ以外で起用される状況にも決して下を向かず、「プレーの幅が広がる」と前向きに取り組んできた。

「今日の活躍次第では序列が変わる可能性もある」と覚悟して臨んだ水戸戦は、「個人としての自信になるような試合だった」一方で、チームの結果(△0-0)にはつながらなかった。今回の初先発でのパフォーマンスが佐野と髙江で形成する不動のダブルボランチに"風穴"を開けるきっかけとなったのか。それは今後の起用法で判明するだろう。結果はどうであれ、現状の宇野にできるのは「自分の色を出しながら、チームの勝利に貢献すること」。それに尽きる。

取材・文●郡司 聡(フリーライター)
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