日本人選手が躍動するスコットランドで起きた、「日の丸撤去事件」の裏事情【現地発】

2022年05月06日 スティーブ・マッケンジー

レンジャーズのサポーターからの横槍?

古橋など日本人選手の活躍により、セルティックの試合ではスタンドに日の丸の旗を振るサポーター姿も。(C)REUTERS/AFLO

 今回は、日本人選手が躍動しているスコットランドのセルティックについて話をしようかな。

 グラスゴーには2つの名門クラブがあって、セルティックとレンジャーズが街を二分しているのは知っての通り。両チームのライバル関係が苛烈なのは、これも周知の通り、宗教的な背景があるからだ。セルティックはカトリック、レンジャーズはプロテスタントのクラブで、お互いに相容れない。

 2月に日本の国旗の一件があったよね。セルティック派の『クロス・キーズ』というパブが、パークヘッド(セルティックが本拠地を置くグラスゴー東部の地区名で、転じてチーム自体やホームスタジアムを指す)で活躍中の古橋亨梧や旗手怜央ら日本人選手を称え、店頭に日本の国旗を掲げたところ、第二次世界大戦の戦没者を侮辱する行為だというクレームが地元の自治体に寄せられた。そのためパブは、国旗を片付けざるを得なかったという一連の出来事だ。
 
 センシティブな事件のようにも思われるけど、第二次大戦云々は言ってみれば方便で、レンジャーズのサポーターからの横槍というのが真相ではないだろうか。ダービーマッチで旗手が強烈なパフォーマンスを演じたばかりだったし、"一部の住民"がちょっと忌々しく思っただけなんじゃないかな。

 この両チームがぶつかり合うダービーマッチ、通称オールド・ファーム(老舗の意)は、「熱狂的」とか「情熱的」とか、そういった言葉では表現しきれないほど、人間のありとあらゆる感情が渦巻き、エネルギーが満ち溢れ、エンターテインメントとして純粋に楽しめるようなものではないというのが正直な感想。熱心なファンでもアウェーのダービーは遠慮するっていう人は少なくないからね。そもそも、アウェー側への割り当てチケットは枚数が限られているんだけど。

 ただ、オールド・ファームでなかったら、パークヘッドでは最高のフットボールを味わうことができるから、現地観戦をぜひお勧めしたい。とくにヨーロピアン・ナイトだね。ヨーロッパ・カップ戦のことなんだけど、対戦相手もクオリティーが高いから心ゆくまでフットボールを堪能できるはずだ。正直、スコティッシュ・プレミアシップのレベルはちょっとね。

 ちなみに、ロンドンからグラスゴーへは列車で5時間、飛行機なら1時間ほど。搭乗手続きや保安検査やらの手間を考えると、僕は断然、列車派だね。ビールでも飲みながら連れとおしゃべりしていれば、5時間なんてあっという間だろう(笑)。

【関連画像】まさかの炎上…日の丸を掲げたスコットランドのパブの実際の写真
 

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