松木玖生はA代表に選ばれるレベルにあるのか?【コラム】

2022年04月21日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

年齢関係なしに今季ここまでの活躍で判断すれば…

ホームの名古屋戦でも見せ場を作った松木。A代表に呼ぶに相応しいパフォーマンスを見せていると言えるのか。写真:サッカーダイジェスト

 果たして、松木玖生はA代表に選ばれるレベルにあるのだろうか。FC東京が名古屋をホームで迎え撃ったゲームを取材している最中に、ふとそう思った。

 今季の川崎戦で開幕スタメンを飾り、今や4-3-3システムのインサイドハーフとして重要戦力になりつつある松木は、この日の名古屋戦でも攻守のつなぎ役としてそつなくプレー。CKの場面ではキッカーとして良質のボールをゴール前に蹴り込むと、53分には永井に決定的なスルーパスを送るなど存在感を示した。

 プロ1年目、しかも18歳でチームの主軸を担うのは掛け値なしに素晴らしい。しかし──。あくまで個人的な印象は、〝18歳にしては"よくやっている、だ。

 年齢関係なしに今季ここまでの活躍で判断すると、例えばFC東京で松木以上にA代表に相応しいのは安部柊斗だろう。90分間戦い抜くタフネス、前線への飛び出しのクオリティ、フィニッシュワークに絡む頻度はいずれもチームでトップレベル(名古屋戦ではミスも目に付いたが)。リーグ序盤戦の貢献で考えれば、今のFC東京でインサイドハーフの一番手は間違いなく安部だ。

 
 そんな安部に比べて、松木はロングパスの成功率が低く、良い形でシュートに持ち込む回数も少ない。今季のリーグ戦でゴールもアシストもゼロという点が、どうしても物足りなく映るのだ。パフォーマンス自体は決して悪くないが、A代表に選ばれるほどの働きをしているかと言えば疑問符が付く。

 現時点なら、招集すべきは安部のほうだろう。ただし、見逃せないのは松木の適応力。FC東京では今季、チーム合流から短期間でレギュラーの座を掴み、試合を重ねるごとに味方との呼吸も合ってきている。半年前までは高校サッカーが舞台だった若者が今やJ1のピッチで大きな調子の波もなくプレーできているところは、正直、目を見張る。

 環境が選手を成長させるケースはある。その点で、松木の適応力はとてつもない武器に見えるのだ。王様のようにではなく、チームを動かす歯車のひとつとしてどう振る舞うべきかを、松木は18歳にして身に付けているように思う。周囲を活かしつつ、自分も活きる術をすでに知っている彼は環境次第で大化けするのではないか。

 そう仮定すると、A代表というステージが松木をさらなる高みへ導いてくれるファクターになる可能性は十分にある。よりレベルの高いプレー環境に身を置くことで飛躍を遂げる。逞しい精神力を備える松木ならそれが期待できるかもしれない。

 現状でA代表に選ばれるレベルにはない印象だが、ただ、選んでほしい願望は個人的に多少なりともある。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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