【柏】背番号を受け継いだ“ライバル”を超えたい――価値ある追加点を生んだ輪湖直樹の秘めたる決意

2015年08月13日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「苦しい時間帯でも、前へ出て行かなければ自分が試合に出ている意味がない」

輪湖は押し込まれていたチームに再び流れを呼び込む貴重な追加点を決め、「チームを助けるゴールになったと思う」と胸を張った。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「入れ!!!」――。
 
 72分、神戸のチョン・ウヨンがヘッドでクリアしたこぼれ球に誰よりも早く反応した輪湖直樹は、右足でトラップしたショートバウンドのボールに向かって左足を一閃。相手GKも懸命に手を伸ばすが、それを交わすようにホップしたシュートはバーに当たってそのままゴールネットを揺らし、柏に貴重な追加点をもたらした。
 
【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・6節

 普通であれば、運動量が落ちてくる試合終盤でも、SBの輪湖は味方のカウンターを逆サイドからフォローし、ボックス内にしっかり侵入していた。「SBの選手がなぜここに!?」という意外性。ACLグループステージ3節のホームでの山東魯能戦、90+2分にペナルティエリア内から決勝弾となるヘディングシュートを突き刺したシーンを彷彿させた。
 
「あの苦しい時間帯でも、前へ行くのが自分の良さ。そうでなければ、自分が試合に出ている意味がない」
 
 そう語る輪湖の言葉には、目の前の1試合に、そしてポジション争いに懸ける覚悟が滲み出ている。
 
「クロスに対して、CBがファーにクリアするのは十分考えられること。流れたボールを相手より先に触ることが大事で、そこはしっかり狙っていた。トラップは少しミスってしまったけど、ミートだけを意識して、あとは気持ちで持っていった」
 
 ボールがバーに当たった瞬間は、頭が真っ白だったという。だが、日頃から「自分は気持ちを見せて戦う選手」と公言する輪湖の強い想いが、ボールをゴールへと導いた。それは同時に、1-0とリードしながら後半開始から押し込まれていたチームに息を吹き返させる勇気も与えた。「あの1点はチームを助けるゴールになったと思う」と本人も胸を張る。
 
 輪湖は今季開幕前にひとつの目標を掲げ、シーズンに臨んでいる。「試合数、得点、アシストで去年の(橋本)和くん以上の結果を残す」――。背番号22を譲り受けたこともあり、昨季まで不動の左SBとして君臨した橋本(現・浦和)を常に意識してきた。
 
橋本 和(2014シーズン)
公式戦41試合・4得点・9アシスト
うちリーグ戦/32試合・3得点・8アシスト、ナビスコカップ/9試合・1得点・1アシスト
 
輪湖直樹(2015シーズン/8月12日時点)
公式戦27試合・3得点・1アシスト
うちリーグ戦/21試合・2得点・1アシスト、ACL/6試合・1得点・0アシスト
 
 得点はあと1点に迫っている一方、アシスト数は第1ステージ初戦の神戸戦で記録した1本のみで、"前任者"には遠く及ばない。第2ステージ5節までの今季のクロス成功率はリーグ8位の28.6パーセントと、昨季の橋本(28.5パーセント)を上回る数字を残しているだけに、クロスを上手くゴールに結びつけていきたいイメージは本人も持っている。
 
「得点・アシストはチームを助ける一番分かりやすい指標。アシストもしている和くんに比べて、自分はアシストが少ない。チャンスだと思った時にはもっともっと出て行って自分の良さを出して行きたいし、"ライバル"に負けないように得点に絡んでいきたい」
 
 アカデミー時代を過ごした柏に7年ぶりに復帰した昨季は、リーグ戦出場4試合に終わり、シーズンの大半をベンチとスタンドで過ごした。その悔しさがあるからこそ、「レイソルに戻って試合に出られているのが純粋に嬉しい」と感じられる自分がいて、今季の飛躍がある。
 
「これからどんどん順位を上げていきたいし、今のレイソルならそれができる」
 
 愛するクラブのために、背番号22の恩返しはこれからも続く。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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