「楽しいから声を出しちゃう」「申し訳ないとは思う」ベトナムサポーターが埼スタで大声援…キャプテンの思いは届かず

2022年03月30日 有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

声出し応援禁止のアナウンスが何度も何度も

ベトナムサポーターは再三注意されるも、声出し応援を最後までやめなかった。写真:田中研治(サッカーダイジェスト/JMPA代表撮影)

 聞こえるはずのない大声援が聞こえてきた。それも1度や2度ではない。

 すでにカタール・ワールドカップ出場を決めている日本代表は3月29日、アジア最終予選の最終節で、ベトナム代表を埼玉スタジアム2002に迎えた。4万人の観衆が入り、赤い国旗を身に着けたサポーターも多く駆け付けるなか、まさかの事態はキックオフ前から起こった。

 国歌が流れるや、新型コロナウイルスの感染対策で、声出し応援が禁止されているにもかかわらず、ベトナム代表のサポーターが衝撃の大合唱。完全にアウトな行為だ。アナウンスと電光掲示板で注意がなされた。

 しかし、警告は届かない。試合が始まってもチャントが響き、19分にグエン・タイン・ビンがCKから先制点を奪った際には、狂喜乱舞。それはもはや、ここ数年見られなかったコロナ前の光景だった。その後も声援はやまず、54分に吉田麻也に同点弾を奪われても、70分にVAR介入で日本の逆転弾が取り消しになっても大騒ぎだ。

 その間には幾度となく、日本語と英語で制止を呼び掛けるアナウンスがなされ、電光掲示板でも同様の訴えがなされるも、完全に無視。結局、1―1でタイムアップを迎えるまで、規則違反は続いた。むしろ、終盤になるにつれ、そのボリュームは増したようにも感じた。
【動画】4万人が駆け付けた埼スタで、最下位相手にまさかの…日本対ベトナムのハイライト
 
 試合後、スタジアムを後にするベトナムサポーターに声をかけ、この一件について尋ねてみた。「仕方ない」で片付ける人がいれば、同じベトナム人としてやるせなさを感じている人がいるのも、また事実である。

「楽しいから大きな声を出しちゃう」
「ルールは知ってたけど、サッカーが好きだから自分の気持ちは守れない」
「確かに駄目は駄目だけど、みんな盛り上がってしまった。申し訳ないとは思う」
「私も声を出したかった」
「声を出したいけど、こういう状態だから…」

 コロナ禍となってから、国内の代表戦では初めて人数制限なしで開催。試合前に、日本代表キャプテンの吉田は「僕たちにできることは、サッカーで一つひとつ、実績を上げていって、政府関係者の気持ちを動かしていくこと。サッカーファミリーみんなで変えていきたい」と、今後のモデルケースとなるべく、覚悟を示していた。

 だが、この日の埼スタに秩序は存在せず。試合の合間、キャプテンが何とも言えない表情で、アウェーサポーターが陣取った一角を指さす姿が印象的だった。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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