「大丈夫。やるしかない」。“怪物CB”チェイス・アンリ、サウジとの優勝決定戦に並々ならぬ決意【U-21代表】

2022年03月29日 松尾祐希

不安に駆られたのは一度や二度ではない

サウジとの優勝決定戦で出場が見込まれるチェイス。期待に応えられるようなプレーを見せたい。写真:松尾祐希

 日本から約8000キロ。遠く離れたドバイの地で、"怪物CB"が実戦を待ちわびている。

 ドバイカップに参戦しているU-21日本代表には、U-19日本代表組から3名、飛び級で招集された。松木玖生(FC東京)、甲田英將(名古屋)、そしてフィールドプレーヤーとしては今大会まだ出場機会が巡ってきていないチェイス・アンリである。

 松木、甲田は今季がプロ1年目の年。だが、チェイスだけは尚志高を卒業した今も所属先が決まっていない。海外クラブへの加入の噂も聞こえるなか、近いうちに行き先は決まるだろうが、4月を目前にして進路が確定してないのは異例だろう。

 だが、ここまでの時間を決して無駄にはしていない。むしろ、今までにない経験を積み、自身の成長を促す機会を得てきた。

 今大会中に誕生日を迎えた18歳は、高校サッカー選手権終了後の1月上旬、A代表の候補合宿にサポートメンバーとして帯同した。「A代表の活動に参加した際、スピードが違って、本当にすごく刺激を受けた」と本人が振り返った通り、A代表のエース大迫勇也とのマッチアップなど普段では味わえない体験をした。

 その後はU-21代表、U-19代表、高校選抜でプレー。常に自分と向き合い、今までと変わらずに謙虚な姿勢でさらなるレベルアップを目指して戦ってきた。

 とはいえ、自身の置かれた状況に焦りがなかったわけではない。同級生たちは次々にリーグ戦やルヴァンカップで試合経験を積む一方で、自身は様々なカテゴリーの代表で活動する日々が続き、そうした状況に心が付いていかなかった。
 
 仲間の活躍を見て、不安に駆られたのは一度や二度ではない。「『うわー』ってなりながら、『試合に俺も出られるのかな?』って悩んでいた。少しだけ不安はありましたね」という言葉は、紛れもなくチェイスの本心だろう。

 だからこそ、今回のU-21代表のUAE遠征に懸ける想いは強い。U-23クロアチア代表との初戦(1-0)、U-23カタール代表との第2戦(2-0)ではいずれも出場機会がなかったが、少しでも吸収しようとベンチから熱心に戦況を見つめていた。

「今までは国内でしか代表の試合を戦ったことがない。(アウェーの国際試合は)雰囲気も違うし、相手からはオーラも出ていた」

 海外遠征の機会を得られたこと自体がチェイスにとっては財産だ。中学時代は代表歴すらなく、神奈川県のクラブ選抜止まり。選抜チームでも決して評価が高い選手ではなかった。

 だが、尚志高の3年間で一から学び、身体能力を生かす術と本格的にサッカーを学んだことで、海外クラブからも目を付けられる選手にまで成長を遂げた。今は3年前の自分と同じ。高校時代にどれだけ騒がれたとしても、U-21代表でもプロの世界でも"一番下"からのスタートだ。そう考えれば、代表で戦う機会を得られるだけで、さらなる成長のきっかけになる。
 

次ページチャレンジを重ね成長してきた18歳に失うものはない

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事