【インターハイ1回戦】市立船橋 3-1 岡山学芸館|派手さはないが“頑張れる才能”が名門を勝利に導く

2015年08月04日 松尾祐希

右SB古屋のポジショニングが市立船橋にリズムを呼び込む。

9度目の優勝に向けて初戦を突破した市立船橋。攻守に隙のない好チームだ。

「最初からやりたいことがやれるわけではない」と市立船橋・朝岡隆蔵監督が振り返ったように、序盤から自分たちのサッカーができなかった。全国大会初戦というプレッシャーは少なからずあったが、試合の入りは岡山学芸館に分があったと言えるだろう。
 
 前半5分に左CKから岡山学芸館・DF祝由哉がヘティングシュート。同13分にはMF井上瑞貴に思い切りの良いミドルシュートを放たれ、相手の鋭い出足を前にリズムを掴めなかった。
 
 前半15分を過ぎると、市立船橋が徐々にペースを掴み始める。その要因となったのが、右SB古屋誠志郎のポジションニングだった。「押し込んだ時に自分が高い位置で関わろうと思っていた。相手の攻撃のパワーを削げるし、自分が高い位置でプレーをしていれば、相手の攻撃力もなくなると思っていた」(古屋)という高い位置取りが攻撃にリズムをもたらし、相手の攻勢を抑えるきっかけとなった。
 
 古屋は前半25分にMF原輝綺の先制弾をFKから演出。守備のでも、粘り強さと豊富な運動量でチームに貢献した。後半に入っても古屋はプレー精度を落とざす、攻守において安定したパフォーマンスを発揮。
 
 後半に2本のPKを沈め2回戦進出を決めた市立船橋にとって、背番号3の存在は大きかった。指揮官も「古屋はアタッキングサードに入っていくし、守備のところも最後までやれる。攻守に於いてバランスがいいですよね。ボランチとか攻撃的なポジションをやらせても一級品。判断とか自分のやれることを整理しながらプレーをしてくれる」と古屋のプレーに太鼓判を押す。
 
 そんな彼のプレーを支えているのが日頃の生活態度だ。「できないことをそのままにはしないのも彼の良いところ。元々、頑張ることで評価を受けて来た子なんです。寡黙だけど頑張れて、1年生の最後には頑張る才能でAチームに食い込んでくるところまでになりました」と指揮官は評する。
 
 普段から真面目に練習や日々の学校生活に取り組んできたことが、今の古屋を形成したといっても過言ではない。技術が長けているわけではないため2年生の春先にチームメイトから試合に出ることを疑問視されたこともあった。その際、指揮官が自らチーム全員の前で「俺は古屋みたいな選手を使う」と説明。ひたむきに練習に取り組む姿勢が周りに与える影響を踏まえメンバーに理解を求めた。
 
「これだけ、頑張れる選手は他にいないと思う。工藤とか押尾みたいなちゃらんぽらんだった選手にとっては良い刺激になって、変わりつつある」と、実際に古屋はチームに良い影響をもたらした。
 
 昨年のインターハイでは初戦となった2回戦で2点のリードを守れず、広島皆実に逆転負け。その借りを返し、2年ぶりとなる夏の王者を市立船橋は目論む。ピッチ内外でチームに刺激を与える古屋の活躍が、優勝のカギを握っていることは間違いないはずだ。
 
取材・文:松尾祐希(フリーライター)
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