地獄から天国へ。浦和L・清家貴子が初戴冠に導く決勝弾をアシスト。指揮官も「まだまだ上へ行ける」と太鼓判【皇后杯】

2022年02月28日 西森彰

「サイドで使ったり、前で使ったりしたくなっちゃう選手」

菅澤の決勝点をお膳立てした清家。楠瀬監督も「まだまだ上へ行ける」と期待を寄せる。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 皇后杯の決勝が2月27日に行なわれ、三菱重工浦和レッズレディースがジェフユナイテッド市原・千葉レディースを1-0で破り、悲願の初優勝を飾った。

 立ち上がりは浦和Lにも、千葉Lにも、全体的に硬い動きがみられた。どちらにとっても勝てば初めての皇后杯獲得というシチュエーションと、準決勝から約50日のインターバルの影響が考えられた。

「その、どちらもあったと思います。コロナの影響で集まれない時期もありましたし、お互いに負けたくないなという気持ちもありました」と浦和Lの楠瀬直木監督は語る。

 そんななか、普段どおりの働きでチームを活性化させていたのが、浦和Lの清家貴子だ。4-2-3-1の右SBで、前半からタイミングよく敵陣内に顔を出して、クロスを上げていく。逆サイドでは塩越柚歩が機を窺い、トップ下の猶本光もミドルシュートを放つ。立ち上がりは3-4-3で戦っていた千葉Lも、5バックで耐える形へ移行した。

 今大会、両チームは、準決勝まで無失点で勝ち上がってきている。先制点の重さは、通常以上の価値があると予想された。守備を固めてチャンスを待つ千葉Lに対して、浦和Lは能動的に戦局の打開を図った。

 前半の30分過ぎには右サイドハーフで先発していた水谷有希が最終ラインに下がり、対千葉L戦ではリーグ4戦連続得点中の菅澤優衣香と、皇后杯2戦連続得点中の清家が前線に並んだ。システムは4-4-2に。

 カウンターを浴びるリスクは承知しながらも、前半から積極的な布陣変更へ踏み切った理由は、千葉Lのリードを奪った際の守り倒せる強さにある。0-0の時間帯が長引き、深い時間帯に1点を取られようものなら、公式戦直近10戦無敗の自信で逃げ切られる危険性が増す。

「先制点を取らなければ勝てない」(楠瀬監督)という思いがあった。「互いに手の内をわかっているし『この時間帯に前へ上げれば嫌なんじゃないかな』」(同)という考えが、ポジションチェンジに踏み切らせた。
 
 そして、この2トップでもゴールを奪えないと見ると、後半からは、立ち上がりの布陣に戻して攻撃を再開。ジャブを打ち続けて、主導権を握り続ける。

 迎えた67分、清家が右から上げたクロスを、菅澤が合わせて値千金の先制点を奪う。その後は、キャプテン・柴田華絵とベテラン・安藤梢のダブルボランチを軸にして、千葉Lに得点を許さず、6度目のファイナルにして初めて皇后杯をその頭上に掲げた。

 前回大会の決勝では負傷退場し、チームも敗戦。今回はチームの優勝に自らも貢献。地獄から天国へ。清家にとっても特別な大会になったことだろう。

 試合後、指揮官に、清家について問うと「スピードがあるし、サイドで使ったり、前で使ったりしたくなっちゃう選手。こちらも(置き場所に)迷っちゃうことがあるんです」と贅沢な悩みが披露され、「まだまだ上へ行ける選手」と太鼓判が押された。

 皇后杯を制した浦和Lも、来週から再開するWEリーグでは追う立場に代わる。首位の INAC神戸レオネッサとの勝点差9を逆転するためにも、清家の活躍は必要不可欠だ。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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