まさに圧巻。サウジの心をへし折った伊東純也は今や日本代表のバロメーターだ【編集長コラム】

2022年02月01日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

やはり気になる左SB。長友と中山の決定的な違いは?

サウジ戦で明らかな違いを作り出した伊東。このアタッカーの存在は頼もしいかぎりだ。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 2022年2月1日、日本代表がサウジアラビアとのワールドカップ最終予選に臨んだ。日本のスタメンは1月29日の中国戦と同じで、そこにある意味森保監督の頑固さが見て取れた。ただ、メンバーが変わらなければ対策されるのは当然で、前半途中までは苦戦を強いられた。

 組み立ての局面で中盤の3枚が上手く絡めず、両サイドバックの酒井や長友は起点になれないなかで、流れを変える原動力となったのは4-3-3システムの右サイドに入った伊東だ。29分に絶妙なフェイントで相手を抜き去ってチャンスメイクすると、32分には対峙したアルシャーラニに走り勝ったうえでのクロスで南野の先制弾をアシストした。ミドルで打ち抜いた50分のゴラッソといい、またしても伊東に助けられた試合だったと言えるかもしれない。

 もちろん伊東ひとりだけが頑張ったわけではない。決して簡単ではないシュートを決めた南野、優れたサポートや力強いボール奪取で中盤を支えた守田、遠藤、田中などの働きも光ったが、それでもサウジアラビアの心をへし折ったのは伊藤のあのプレー。50分のミドル弾だろう。

 今や日本の右サイドは伊東ありき。このアタッカーのパフォーマンスが日本のバロメーターと言っていい。実際、伊東が躍動し始めてからの日本はサウジにほぼ付け入る隙を与えなかった。ボールを持てば何かやってくれそうな雰囲気を醸し出す伊東の存在感は心強いかぎりだ。
 
 
 心強いと言えば、板倉と谷口の両CB。中国戦に続き、サウジ戦でも安定した仕事をした彼らは計算できる戦力になりつつあるといっていい。吉田、冨安の壁は依然として高いが、CBの選手層を底上げした点でふたりは高く評価されて然るべきだろう。

 ただ、問題点もある。やはり気になるのは左サイドの長友。ボールを持った時の主なアクションは、縦への突破からのクロスか、バックパス。プレーのレパートリーが少なく、唸るようなポジショニングや最終ラインからの飛び出しもないので、攻撃に厚みをもたらせない。フリーな局面でも味方からパスがもらえないと映ったのは、果たして著者だけだろうか。

 左SBとして途中出場した中山は長友に比べて足もとが柔軟で、組み立ての局面での視野が広い。その分プレーの選択肢が多く、ひいてはチーム全体のクオリティアップに貢献できるはずだ。ビルドアップの局面での関わり方が、長友と中山の決定的な違いと言えるだろう。そうした観点からも最終予選のうちに中山を一度は先発させてほしいのだが、これまでの起用法から判断するかぎり、期待しないほうがいいか。

 いずれにしても、組み立ての幅を広げる意味で左サイドバックの人選は再考の余地ありだ。勝利した試合だからこそ、現状の問題点をしっかりと見つめるべきだ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事