すくすくと育つ、どこまでもサッカーを愛する快男児、松木玖生の現在地【FC東京】

2022年01月31日 後藤勝

衝撃の極めつけはキッカーを務めたこと

練習試合では、接触で倒れ込む選手に寄っていくときにニヤリと余裕の笑み。松木の振る舞いはほとんどベテランのそれだった。写真:後藤勝

 日本中の耳目を集める男、FC東京の松木玖生はJリーガーとなって最初の沖縄キャンプを目一杯楽しんでいた。

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 1月31日の練習はオフになった。前日に雨の中、京都サンガF.C.相手にハードな練習試合をこなしていた選手たちは、軽めのリカバーで時間少なめにピッチをあとにする。しかし、同じ2セット目に出た先輩たちが帰ったあとも、松木は同期のチームメイトとシュート練習で汗を流し、ともに笑顔でボールを蹴っていた。

 ゴールキーパー役は波多野豪。国頭に遅れて合流したばかりの松木と、エンリケ・トレヴィザンの誕生日にサプライズプレゼントを仕掛けたコンビがそこにいた。

 出場時間が少なめだったルーキーの岡庭愁人、安田虎士朗、梶浦勇輝、若手の品田愛斗や平川怜、特別指定の西堂久俊らには、ボールに親しむ時間が確実に必要だった。だが、疲労の回復に努めてもいいはずの松木までもがその場に──。戦友と同じ時間を過ごすことを選び、背番号44は青春真っ只中の空気を全力で吸い込んでいた。

 京都戦のプレーは見事だった。SBではなく得意の中盤でプレー。ゴール前とゴール前の間をダイナミックに走り、自陣へと守備に戻ったり、攻撃で前線に向かいFWと入れ替わったり。球際も激しく、時にはタックルで相手を吹っ飛ばすシーンもあった。

 原動力となるのは、どこまでもすこやかに育っている頑健な肉体だ。逞しく盛り上がった大胸筋と大腿筋は、J1のチーム同士の練習試合でもまったく見劣りしない。それどころか、突出して分厚く映る。

 そして表情豊か。相手に対して熱い気持ちを見せ、堂々と審判と話す。一転、接触で倒れ込む選手に寄っていくときには、ニヤリと余裕の笑み。振る舞いはほとんどベテランのそれだった。
 
 ほかの選手たちよりも合流が一週間遅かったのに、もうFC東京に馴染んでいた点にも驚かされた。コンビネーションとコミュニケーションに問題はなく、松木が入ったセットの中盤は、先発組のそれよりもスムーズにボールを保持し、回していた。

 衝撃の極めつけはキッカーを務めたことだ。彼の蹴った右CKから得点が生まれた。お客さんではなくしっかりとチームの一員になっている事実に疑いの余地はない。

 冷静に見れば、現状は未知数だ。中盤は中盤でもトップ下やアンカーでどのくらい出来るかはわからない。インサイドハーフやボランチならば持ち味を出しやすいだろう──というくらいだ。とはいえ適性を見極め、各自にふたつのポジションをこなすよう求めるアルベル監督のこと、松木の力を引き出すべく適材適所に配置するに違いない。

取材・文●後藤勝(フリーライター)

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